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「この人、もしかしてADHDではないか」──そう感じても、その一言を本人に投げかけるのは、本当に正しい対応と言えるのだろうか?善意からの指摘が、かえって強い拒否や関係の断絶を生むこともある。本人がまだ自分の特性に気づいていない段階で、周囲はどのように向き合い、支えていけばよいのか。※本稿は、アメリカ小児科専門医の松浦有佑『発達障害を正しく知る』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
本人が特性に気づいていない
認めていない場合の注意点
大人の発達障害に関わる上で、最も繊細な対応が求められるのは、本人が自分の状態に気づいていない、あるいは認めていない段階です。このような状況での、不用意な発達障害をほのめかすような発言は、強い拒否反応を招き、信頼関係が壊れ、支援の道が閉ざされてしまう危険性があります。
私は小児科医として日々の診療で、子どもとその家族と向き合っています。発達外来を受診されるご家族の多くは、すでに誰かから指摘されていたり、困りごとを感じていたりした上で来院されますが、必ずしも「受容」の段階にあるとは限りません。診察で最初は「集団生活で困りごとがあります」と語っていた保護者が、診察が進んでいくうちに、
――「家では全く困っていません」
――「この子はこんなこともできるんです。他の子と比べても問題は感じません」
と、防衛的な発言へ移行していくことはよくあります。
この背景には、実際に意見が180度変わってしまったわけではなく、診断を直前に控え、
――「うちの子が発達障害だなんて認めたくない」
――「原因は自分の育て方ではないか」という自責の思い
といった複雑な心理的葛藤が隠れていることがあります。







