2021年に世界一の富豪になったイーロン・マスクは、もし国連世界食糧計画が世界から飢餓をどうやってなくすかをこと細かに説明できるのなら、60億ドルを出すとツイートで確約した。これは自分たちの使命の遂行より報告書の作成に長い時間を費やしているNGOにとって、「王様は裸だ」と言われたに等しいという声が一部からあがった。
その一方で、そんなものは人類全体を簡単に養えるだけの金を持った人間のお門違いな釣り文句でしかない、との声もある。とはいえマスクのほうも国連のほうも、指摘しているのは同じ問題だ。
このきわめて基本的な必要を満たすには、巨大な富でも巨大な計画でも十分ではない。そしてそのどちらもが、スプレッドシートと数字とトレードオフからなる同じ言語を使っている。
AIが導く「最高」は
過去を模倣したにすぎない
サム・アルトマンがマスクとともにOpenAIを立ち上げたとき、彼は人工知能を単にいかしたツールというのではなく、世界を救うもうひとつの道だと捉えていた。AI技術は急速に進歩しているし、今後も進歩しつづけるだろう。そしてまもなく、すべての成人が年間1万3500ドルを受け取れるだけの富を生み出すだろう。サムがオンラインの投稿で示唆したこの内容は、大手報道機関にも取り上げられた。
その後サムは私に、あの数字は全体の文脈から切り取られたものだと語った。正確にはああ言ったのではない。しかし考え方そのものは有効だ。自動化のおかげで人類は創造的努力のための時間をたっぷりもつことができ、生産的なエネルギーを新たな発明へと向けられるようになる、と。
ウラム(編集部注/数学者スタニスワフ・ウラム)以降の数十年間、コンピューターアルゴリズムはモンテカルロ法(編集部注/乱数を用いたシミュレーションによって複雑な問題を解く計算手法)を、最大値を求める線形計画法を、抽象化を何層も何層も積み重ねてきた。
ちがいは程度の差だけにはとどまらない。モデリングの方法にも転換があった。初期のモデルは、私がかなり以前にケンタッキー州でアマゾンのブルドーザーを見て最初に思い描いたものと似たところがあった。すでにある土地の形状に沿い、より深い轍を穿ってもともとの輪郭を強調するのだ。都市や農場を造る場合は、まずその場所が示すもの――風がどの方向から吹くか、水がどう流れるか――に注目した。







