サム・アルトマン氏サム・アルトマン氏 Photo:SANKEI

毎月500ドル(約8万円)が無条件に配られる社会は、人を本当に幸せにするのか──。OpenAIのCEOサム・アルトマンは、ベーシックインカム(UBI)が貧困や格差を解消し、社会の資源配分を最適化し得ると考え、その可能性に強い関心を寄せてきた。しかし、複雑に絡み合う社会を「効率」や「最適化」という単一の物差しで捉えることは本当に可能なのか。応用数学者の著者は、数字で社会を設計しようとする発想そのものの限界を問い直す。※本稿は、ココ・クルム著、松本剛史訳『最適化幻想 効率が人を幸せにしない理由』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

本気で世界を救おうと
考えるテックの巨人たち

 サム・アルトマンはOpenAIのCEO兼共同創業者である。もうひとりの創業者は、あの電気自動車と宇宙ロケットの大立者イーロン・マスクだ。

 OpenAIのミッションは「汎用人工知能が人類全体に益をもたらすようにする」こと。サムはシリコンバレーで一、二を争うスタートアップ・インキュベーター、Yコンビネーターの元社長で、Reddit(編集部注/米国のソーシャルニュースサイト)の暫定CEOだったこともあり、ヘリオンとオクロという二つの原子力企業の取締役会長も務めていた。

 サムの最新ベンチャーであるワールドコイン(編集部注/暗号資産プロジェクト)は、仮想通貨と引き換えに多くの人たちの眼球をスキャンすることを目的とする会社だ(編集部注/人間の眼球内にある虹彩を生体データとして集め、世界規模でデータベースを構築することを目指している)。2022年の時点で同社は、シリコンバレーの投資家たちから1億2500万ドルを調達している。

 だが、サムはそうした栄誉に甘んじることも、自ら吹聴することもない。人と会話するときは好奇心にあふれ親切だが、その慎ましく人当たりの良い外見の裏に、すさまじい勢いで前へ突き進もうとする人物がいることもすぐにわかる。自分が情熱を注ぐ対象について紹介するために、サムはこう説明する。