取り調べは終わった。完落ち、だ。捜査一課長である政伸は、目の前でまた焼き芋をもぐもぐと食べ始めた偉大な母・寿美花代に、なぜ早く言わなかったんだ、と心の中で呟いた……。

親の圧倒的な芸に
打ちのめされた役者の本音

 父・忠夫が昔、「ママと結婚する時に、いろんな人から『凄い才能を取り上げて、あんたは酷い人や」と責められてなぁ。ま、しゃーないな。俺も舞台観てあんまり凄くて、腰抜かしたから」と、ぶつぶつ言ってたのを思い出しました。

 観たい方は『華麗なる千拍子』、そして一人で何役も演じながら20分近くを大迫力で魅せ切るナンバー『行こうぜ』をネットでググってください。歌い、踊る、変幻自在な寿美花代が観られます。これは、かなわない。僕がこれを観たのは40歳を過ぎてから。良かったよ、20代で観なくて。観てたら役者やってないっす、凄すぎて。忠夫の「ま、しゃーない」が木霊となって聞こえてきます。

 なんて言いながらも忠夫さん、貴方、嬉しそうだったね。そんな貴方が大好きだよ。身内に超えることができない人がいるって、最高に嬉しいんです。芸で超えることができない親を持つって、本当に誇らしい。こんな幸せを与えてくれた、寿美さん、忠夫さん、

どうもどうも いやどうも
なにのほうは いずれなにして
そのせつゆっくり I miss you!

父親から教わった
良い役者の十箇条

 ちなみに、そんな哀しい父・忠夫が、成功した経営者の秘密と哲学からつまみ食いしてまとめた、良い役者の十箇条というのを教えてくれました。最後に皆さまに、内緒でお教えします。ついでに僕自身と照らし合わせた評価も。

一 貧困、落第、借金、失業、大病、戦争、肉親や異性との離別や軋轢を経験している。
→僕の場合は、借金ですね。いずれ書きますが。

二 他人を頼りにせず自らを頼りに生きている。
→✕ 人に頼りきってます。

三 自分の幸運を信じきっている。
→うーん、かもね。

四 人の喜怒哀楽、嫉妬、怨念をよく理解している。
→知ってますよ、こわいよ、足すくわれるよ。

五 金の恐ろしさと、金の頼もしさとを共に十分知っている。
→3回も借金したから、十分に知ってます。

六 遊びを通じて時流を知り、時流に乗り、人との出会いを生かしている。
→これ、今だと出会いのツールは遊びじゃなくてネットでしょうね。生かしていると思います。

七 何事も捨てるものは捨て、集中し、まず行動している。
→お仕事の時は、やってます。

八 やる気満々、とにかく欲が深い。
→✕ そうでもないかも。

九 災いを福に転じることができ、変幻自在。
→✕ これができたら、役者やってないよ!

十 矛盾した問題をありのままに認め、それらを同時に解決している。
→解決しているかわからないけれど、認めるしかないものがほとんどですよ。

『おつむの良い子は長居しない』書影おつむの良い子は長居しない』(高嶋政伸、新潮社)

 父は最後にこう付け加えてくれました。

 まぁ、一言で言うと、ええ役者は、

「明るく、元気で、遊び好き、欲が深くて、ええ加減」

 ていうこっちゃ。定期的にスキャンダルあるのもええっちゅうこっちゃな、ははは。

 政伸、よー覚えとき、はははは。

 やっぱり親子。しょうもないねえ。