明日が最終回とは思えない…駆け足展開と抑制された“小津映画風”の空気感、これでいいの?【あんぱん第129回】『あんぱん』第129回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は第129回(2025年9月25日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

みんなしみじみ『それいけ!アンパンマン』

 断じて打ち切りではなく、予定通りなのに、まるで打ち切り番組のように駆け足に見える。これまでにない斬新な最終週だ。

 中園ミホ先生、『花子とアン』は週6で、『あんぱん』は週5になって執筆が少し楽になったというようなことをインタビューでおっしゃっていた記憶があるが、週6の感覚で書いていたのではないだろうか。少なくとも、あと1週あると勘違いしていたのではないだろうか。

 それでこぼれてしまった分を、民放だと最終回を延長放送するところ、NHKは特別編で対応したのかもしれない。

 1988年10月。2年かけてこだわって作ったアニメ『それいけ!アンパンマン』が放送開始された。のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)は一緒に見る。NHKの番組で日本テレビを見ているとは珍しい。

 嵩がこだわった主題歌『アンパンマンのマーチ』が流れ(第128回で直した歌詞は出てこなかった)、アフレコで戸部由子(声:戸田恵子)が泣きながら語っていた「ボク、胸の中がとってもホカホカしてるよ。人を助けるって、こんなに胸があったかくなるものなの?」のセリフも出てきた。

 各地でみんなテレビを見ている。キューリオでは八木(妻夫木聡)や蘭子(河合優実)、粕谷(田中俊介)、アキラ(齊藤友暁)が。喫茶店ではメイコ(原菜乃華)とシェフになったらしき健太郎(高橋文哉)とだいぶ老けたいせ(大森元貴)が。高橋と大森の老け表現のアプローチが鮮やか。

 手嶌治虫(眞栄田郷敦)も仕事場で「柳井さんおめでとう」と見ている。

 世良(木原勝利)は薪徹子(戸田恵子)の写真に語りかける。「あの嵩さんが飢えた人々を救うヒーローを誕生させましたよ」

 そして、ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)はまた旅の格好で電気屋のテレビを見ている。すると少年(木村優来)が寄って来て「ジャムおじさんですか」と尋ねる。

「ちがうーー」