竹下登元首相 Photo:SANKEI
政治資金パーティーと聞いて、裏金や収支報告書への不記載問題を連想する読者は少なくないだろう。だが、その出発点は、金権政治への批判を背景に生まれた「クリーンな資金集め」の仕組みだった。竹下登はその手法を誰よりも巧みに使いこなし、一夜にして20億円もの巨額資金を集めるまでになる。きれいなはずの集金術は、なぜ政界を揺るがす火種となったのか。※本稿は、読売新聞グループ本社代表取締役会長兼主筆の老川祥一著『長期政権の条件』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
カネで失脚した角栄の
同じ轍を踏まない竹下登
目標に向かってまっしぐらに突き進む田中角栄さんとはまるで対照的に、竹下登さんは用意周到、あれこれ迂回して根回しをしながらじわじわと目標に迫る手法が特徴だ。
政界では、業界などからの陳情の処理と政治献金や票集めは切っても切れない関係にあるが、対応の仕方によっては公職選挙法違反、あるいは贈収賄事件にも発展しかねない危うさと隣り合わせでもある。だからだろうか、その点でも竹下さんの手法は独特だ。
私の知り合いの企業人が、竹下さんに何かの用件で陳情に行った時のことを話してくれて、「さすが竹下さんだなあ」と、しきりに感心していたことがある。
陳情を聞き終わった竹下さんは、ふんふんと言いながら、ある代議士の名前を挙げ、「ああ、その件なら〇〇君のところに行って、竹下がこう言っていたと言ってごらん」といったという。
「〇〇君は次は〇〇大臣かなあ、と竹下がつぶやいていた、とね」
半信半疑でその代議士のところに行って、言われた通りに竹下さんの言葉を伝えると、代議士の顔がパッと明るくなり、「へえ、竹下さんがそんなことをいっていたの」。そのあと陳情の用件を話すと、あっさりと引き受けてくれたという。







