竹下さんの口から出た言葉は〇〇君についての入閣予想で、それも単なる個人の感想にすぎない。たとえ陳情に来た人から後で竹下さんになにがしかのカネが贈られたとしても、陳情の案件とは直接の関係はないし、贈収賄事件に発展するような職務権限との関わりもなく、単なる政治献金という位置づけとなるだろう。
竹下さんの紹介を受けて実際に陳情を捌いた政治家の方は、金品の受領ではなくのちの入閣が陳情処理の「報酬」ということになるが、閣僚人事の権限はその時の首相にあり、竹下さんが直接、権限を行使したことにはならない。
という具合に、口利きという行為1つでも、あとで刑事責任を問われるようなことにならぬよう、周到に策をめぐらせるのが竹下さんだった。
「広く、薄く」浄財を集めて
クリーンな政治を実現しよう
政治資金集めでも、田中さんとはまるで対照的な、合法的な手法を取った。のちに自民党全体を根底から揺さぶることになる「政治資金パーティー」方式を大規模に定着させたのは、私の記憶する限り、竹下さんだったといってよかろう。
政治資金パーティー方式はもともと、金権政治批判の一環として三木首相が、一般の有権者から「広く、薄く」浄財を集めるやり方として、アメリカの政治資金パーティーを参考に推奨したものだった。
当時は、後援会と言えば地元選挙区の有力者らをメンバーとする、票集めのための中核組織としての地元後援会と、東京の主要企業などをメンバーとする、政治献金集めの後援会が一般的だった。しかし竹下さんはそれに加えて、自分の選挙区に限らず各都道府県に一つずつ地方後援会を組織し、そこを足場にして小口の献金を集める新しい方式を編み出した。
竹下さんがまだ田中派幹部だった頃のある時、「安倍ちゃん(安倍晋太郎さん。安倍晋三首相の父親)に、こんなやり方もあるよと教えてやったら喜んでいたよ」と言ったので、安倍さんに確かめると、「ああ、いいこと聞いたんで俺もやってみることにしたよ。でも手間暇かかるなあ」と笑っていたことを思い出す。







