こんなん泣くわ…「あんたと逝っちまうのも悪かない」看病疲れの妻に、余命わずかな夫が返したひと言〈風、薫る第71回〉『風、薫る』第71回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第71回(2026年7月6日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

山本、りんと牛鍋を食べたと嘘をつく

 第15週「差し出せぬ手」は第14週に続いて松本仁志が演出をつとめている。第11、12週が佐々木善春演出だったが、たいてい、1週ごとに演出が変わるのが朝ドラ。だから珍しい。山本夫妻編が同じトーンで続くのは見やすいだろう。

 それゆえ、金曜から続いて月曜の朝から重苦しいトーンになっているとも言える。

 第14週は、身内が重病になったとき、難しい手術を決断するかどうか、あるいは告知をどうするかという問題提起だった。

 第15週は、看病する側とされる側の共倒れ問題が立ち上る。

「最後に1つ、嘘(うそ)をつかせてほしい」

 山本辰治(本田大輔)に巻き込まれたりん(見上愛)。

 病院を抜け出して、テイ(伊勢佳世)がふせっている家に向かう。

 家でひとり寝ているテイに山本は「手術してよかった。おまえのおかげだ」と安心させる。

 自分が重病でしんどいにもかかわらず、妻を思いやる夫の心。

 夫の看護疲れだと思うし、そうではないとしても、看護していた妻が倒れたら彼女を世話してくれる人がいない問題は深刻だ。

 山本はさらに、牛鍋をりんにつきあってもらって食べてきたと嘘をつく。

「おいしかった。ね」と促され、りんは「はい」とほほえむ。

 テイは体調を悪くしているから誘えなかったことにして、「仕方ねえから、おめえの分まで食ってきて、腹いっぺえだ」と嘘を重ねる山本。

 テイにしてみれば、看護婦と牛鍋を食べにいかれて、むっとはしないのだろうか。夫が満足すれば良いと思うほど夫思いなのかもしれない。

 テイに土産のひとつでも、と思うが、牛鍋をテイクアウトは難しいのだろう。とくに夏だし。そもそも嘘なんだから土産も何も買ってこられないわけだが。