ハムやソーセージ、ベーコン――当たり前のように口にしている人も多いだろう。だが、その「身近な食品」が、認知症リスクを高める可能性があることをご存じだろうか。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏は、最新研究をもとに、加工肉と脳の老化の意外な関係を解説している。認知症を遠ざけるために知っておきたい「食事の新常識」を紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・石井一穂)

【認知症リスクも高まる】脳の老化を早めてしまう“身近な食品”とは?Photo: Adobe Stock

脳の老化を早める「身近な食品」

認知症というと、加齢や遺伝が原因だと思われがちだ。

しかし近年では、毎日の食習慣も脳の老化に深く関わっていることがわかってきた。

元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家・下村健寿氏は著書の中で、できるだけ避けたい食品の一つとして「加工肉」を挙げている。

加工肉も、認知症予防の観点からはできるだけ避けたい食品です。
加工肉とは、保存性や風味を高めるために燻製、塩漬け、発酵、乾燥などの処理が施された肉製品を指します。具体的にはベーコン、ハム、ソーセージ、サラミ、ホットドッグ、コンビーフなどが挙げられます。

――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より

ベーコンやハム、ソーセージなど。
どれも私たちにとって身近な食品だ。

なぜ加工肉は認知症リスクを高めるのか

加工肉は、脳の健康という観点では見過ごせないリスクを生じさせるという。

下村氏は、その理由を次のように説明している。

①高塩分
加工肉には、保存性を高めるために大量の塩分が含まれています。過剰な塩分摂取は高血圧のリスクを高め、これは脳血管性認知症のリスク因子となります。

 

②高飽和脂肪酸
霜降り肉と同様に、加工肉には多くの飽和脂肪酸が含まれていることが多く、これが内臓脂肪の蓄積や全身の炎症、インスリン抵抗性を引き起こす可能性があります。

 

③高度糖化最終産物(AGEs)
加工肉は高温で調理されることが多く、この過程で、体内で炎症や酸化ストレスを引き起こす高度糖化最終産物(AGEs)が生成されやすくなります。AGEsは脳の健康にも悪影響を及ぼすことが示唆されています。

――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より

加工肉には、「塩分」「飽和脂肪酸」「AGEs」という三つの要因が重なり、脳の健康に悪影響を及ぼす可能性があるという。

脳の老化が「1.6年」早まる可能性も

さらに注目したいのが、加工肉と認知症リスクの関係を調べた最新研究だ。

下村氏は、こう紹介している。

とくに注目すべきは、加工肉と認知症リスクの関連性です。2025年に医学誌「Neurology」に発表された大規模な研究では、加工赤身肉を週に約2回以上摂取する人は、月に3回未満しか摂取しない人に比べて、認知症の発症リスクが13~14%高まることが示されました。
この研究では、加工肉の摂取量が多いほど認知機能の低下が加速し、脳の老化が約1・6年早まる可能性も指摘されています。

――『糖毒脳 いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』(下村健寿・著)より

もちろん、一度食べただけで認知症になるわけではない。

しかし、加工肉を毎日食べ続ける習慣は、将来の脳に少しずつ影響を与えている可能性がある。

下村氏は、肉を食べるのであれば脂肪の少ない赤身肉を選び、味付けも焼肉のタレではなく、わさびや塩、胡椒などシンプルなものを勧めている。

毎日の小さな選択が、将来の脳の健康を左右するのかもしれない。

(本稿は、下村健寿著『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容をもとに作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。