部下のモチベーションを上げるために、意識的に褒めるようにしている――その取り組み自体は間違っていない。しかし、褒め方によっては、信頼を失う原因になってしまうことがある。

とてもすばらしい

「褒めましょう」というアドバイスの落とし穴

マネジメントに関する書籍やセミナーでは、
「部下を積極的に褒めましょう」というアドバイスが頻繁に登場する。
承認欲求を満たすために、小さなことでも言葉に出して認めることが大切だ、という主張だ。
このアドバイスを真剣に受け止め、
心にもないお世辞を言ったり、無理に褒めるポイントを探したりしている上司も多いという。

しかし、安易な褒めは部下のモチベーションを上げるどころか、
「この上司は信用できない」と思われる原因になるとされている。
なぜ、褒めているにもかかわらず、信頼が失われてしまうのだろうか。

部下は「上っ面の言葉」を見透かしている

「部下のモチベーションを上げるために、とにかく褒めましょう」
「部下の承認欲求を満たすために、小さなことでも口に出して褒めましょう」
世の中のマネジメント本には、このようなアドバイスがあふれています。
これを真に受け、心にもないお世辞を言ったり、無理やり褒めるポイントを探したりしている上司も多いのではないでしょうか。
しかし、安易な「褒め」は、部下のモチベーションを上げるどころか、「この上司は信用できない」と思われる原因になります。
なぜ、褒めているのに信頼を失うのでしょうか。
それは、部下もまた何十年と生きてきた「人間のプロフェッショナル」だからです。
何千人との会話を経てきた彼らは、「ウソっぽい」「ただの機嫌取りだ」「本心ではそう思っていない」という空気感を敏感に察知します。

その理由はシンプルだ。
部下もまた、何十年と生きてきた「人間のプロフェッショナル」だからだという。
日常の無数の会話の積み重ねを通じて、
相手が本心から言っているのか、それとも表面だけの言葉なのかを、
人間は感覚的に察知する能力を持っている。

「なんか嘘っぽい」「ただ機嫌を取っているだけだ」「本当はそう思っていないはずだ」――
こうした違和感は、はっきり言語化されなくても、
部下の中に静かに蓄積されていく。
そして、その積み重ねがやがて「この上司の言葉は信用できない」という評価につながってしまう。
褒める回数を増やせば増やすほど、その空洞が大きくなっていく可能性もある。

「褒める」より「本音を伝える」ことの方が、信頼をつくる

では、どうすればよいのか。
褒めることをやめるのではなく、本当にそう思ったときにだけ言葉にするということだ。
義務感や方法論から生まれた言葉と、
実際に感じたことから出てきた言葉では、受け取る側の感触がまったく異なる。

部下が本当に優れた仕事をしたとき、
それを具体的に、そして自分の言葉で伝えることが、
形式的な褒め言葉よりもはるかに大きな信頼をつくる。
「とにかく褒める」という技術より、
「本当に感じたことを正直に伝える」という誠実さの方が、
長期的な信頼関係の土台になっていく。

次に部下を褒めるとき、本当にそう思えるかどうかを一度確認してから、言葉を選ぶことだけでいい。

(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)