意欲はあるのに、今の仕事には身が入らない。そんな部下に「まずは目の前の仕事をしっかりやれ」と言っても、なかなか伝わらない。必要なのは、叱ることではなく「言語化」だ。

ちゃんとやって

頭ごなしに否定しても、意欲は失われるだけ

目の前にやるべき仕事があるにもかかわらず、
一足飛びにやりたいことを優先しようとする部下に対して、
多くの上司がまずとってしまうのは、否定や叱責だ。
「今はそういう立場じゃない」「まずは基本をやれ」――
言いたいことはわかるが、こうした言葉は部下の意欲を削ぐだけになりやすい。

必要なのは否定ではなく、
「上司が何を期待しているか」と「部下が評価される役割は何か」を、
改めて言葉にして伝えることだという。
部下がやりたいことへの意欲を持っていること自体は、否定すべきではない。
問題は、今の立場において何が求められているかが、
部下の中で明確になっていないことにある。

「評価される役割」を言語化して伝える

目の前のやるべきことをやらずに、一足飛びにやりたいことを優先する部下には、どう接すればいいのでしょうか。
ここで必要な技術は、「上司の期待=部下の評価の対象」を改めて言語化して伝えることです。
例えば、営業事務の部下が「SNSマーケティングをやりたい」と言ってきたとします。ここで頭ごなしに否定するのではなく、冷静に「部下が評価される役割」を定義し直してください。
「君の意欲はすばらしい。でも、今の君の役職と業務担当において、会社が求めている役割(評価対象)は何かを考えてほしい。君に期待しているのは、現場の営業担当者が一件でも多く商談に行けるように、日程調整や資料作成を完璧にサポートすることだ。君の給料は、サポート業務の完遂に対して支払われているんだよ」

この伝え方のポイントは、まず部下の意欲を認めていることだ。
「君の意欲はすばらしい」という言葉が先に来ることで、
部下は「否定された」ではなく「聞いてもらえた」と受け取りやすくなる。
そのうえで、今の役職と業務において何が評価の対象になるのかを、
具体的に言葉にして示している。

「給料はサポート業務の完遂に対して支払われている」という一言は、
厳しく聞こえるかもしれないが、部下にとっては重要な情報だ。
自分が何によって評価されているのかが明確になることで、
今やるべき仕事の意味が初めて見えてくる。
やりたいことを否定するのではなく、
まず今の仕事で成果を出すことが、次のステージへのステップになるという文脈を、
上司が伝えることが大切だ。

「何をやれば評価されるか」を明確にすることが、部下を動かす

部下がやるべきことに集中できていない背景には、
そもそも「何をすれば評価されるのか」がはっきり伝わっていない場合が多い。
やりたいことに目が向いてしまうのは、
今の仕事が自分の評価にどうつながっているかが見えていないからでもある。

上司が「評価の対象となる役割」を丁寧に言語化して示すことで、
部下は今取り組むべきことの輪郭をつかみやすくなる。
部下の意欲を否定せずに、今の立場で何が求められているかを伝えること――
その順番と言葉の選び方が、部下を動かすための鍵になっていく。

やりたいことを言い出した部下に対して、まず意欲を認めたうえで「今の役割で評価されることは何か」を言葉にして伝えることだけでいい。

(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)