いつも笑顔の人ほど気づけない…「笑顔という鎧」つけていませんか?〈風、薫る第74回〉『風、薫る』第74回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第74回(2026年7月9日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

りんが見つめる白い壁

 団子屋で直美(上坂樹里)とシマケン(佐野晶哉)がりん(見上愛)について語らう。

「人としてと看護婦としての正しいが、違うときがあって」と直美。

 このシリアスな話をするときは、チュウ(若林時英)はいないほうがいいので、団子じゃないメニューをいろいろ試してるんで持ってきます、と席を立つ。彼が気を利かせているわけではなく、作家がそうさせているのだ。

 うまく考えているのは、そのメニューを直美が家に持って帰ることにしてあることだ。

 チュウが作ったのは「お焼き」。彼の故郷・信州の味だった。珍しいお菓子を、美津(水野美紀)、環(英茉)とおしゃべりしながら家族で食べる。

 でもりんは癒やされきれない。その晩も寝顔が苦しそう。それを直美が心配そうに見つめている。

 りんのメンタルは一向に上向かない。仕事で、山本(本田大輔)を思い出すような局面にぶつかるたび動作が止まってしまう。

 表情がなくなってしまうりん。例の壁のヒビを見つめる。手で触れると、ポロッと欠けてしまった。

 これを見ていて思い出すのは、日曜劇場『半沢直樹』の滝藤賢一が演じていた役だ。主人公の半沢の同僚役なのだが、職場のストレスで精神崩壊していく。その過程をじわじわ広がる黒い墨汁のような液体で表現していた。徐々に黒い液体に心が侵食されていく様はインパクトがあり記憶に残る名場面であった。

 りんが見つめる白い壁のひび割れもそれに似て、彼女の心の崩壊を表しているようだ。

 見上愛の、悩みが募って能面のようになった表情になんともいえない味わいがある。大河ドラマ『光る君へ』(24年)でもそうだったが、はつらつとした表情よりも憂い顔が似合う。