
シマケン、りんの微笑みを「書評」する
直美は捨松(多部未華子)に相談に行く。
「私はそれしかないと」の「それ」はここでは伏せられている。『風、薫る』ではすっかりお馴染みになった手法だ。その場では明かさず、ちょっとあとになって、そのとき何を言ったりやったりしたのかがわかるようになっている。続きを見たくなる工夫だ。
場面はすぐに変わって、りんが環の漢字の書き取りを見ている。
自分の名前が漢字で書けるようになった環。でも瀬の頁部分が一文字足りない。
環は「りん」という字も書いてみせる。
もうすぐ小学校に行くから、読み書きを頑張っているのだ。りんが看護婦になったのは、環を学校に通わせるためだった。その悲願がかなうのだ。
「頑張らないとね」とりんはつぶやく。傍から見ればもう十分頑張ってきたのだが、りんはまだまだ頑張ろうとする。以前、りんが環を励ますときに、「気張っていこう」と言っていたことがあった。いまは「気張っていこう!」という元気はなさそうだ。
そこへシマケンがやって来る。直美からりんが休みで家にいると聞いて来たのだ。
もっと長く休めないのか、聞かれたりんは「こう見えても、この家の大黒柱なんで、そういうわけには」と答える。
そして、話題をシマケンに向ける。
シマケンは最近、書評家として活躍していて、りんも読んでいる。
「シマケンさんの書評はなんだか読みたい気にさせる」とりん。
シマケンなら辛口で批判的なものを書きそうだが、仕事と割り切って、本が売れるものを書いているらしい。
シマケンは書評の体(てい)でりんの現況を評しはじめる。
「この筆者は、元来、明るいたちではあるものの、おそらくつらいときほど、そうやって歯を食いしばり、顔に、笑い顔の面をつけてきたのであろう。能面ならぬ、おかめの面なり」
「その面は、筆者にとって、よろいのようなものであろう。働くため、母でいるため、大黒柱になるため、笑って、笑って、笑って――」
りんは、笑顔という面、あるいは鎧を身につけて生きてきた。それは他者からの攻撃をはねのける強固なものではなく、他者に気遣う柔らかな鎧。
「でも僕は、そんな面は取ってほしい」







