スプリームクラスは
かつてのグリーン個室の復活か?
スプリームクラスは誰が、どのように利用するのだろうか。JR東海が想定するのはプライベート性、プライバシーを重視する乗客だ。同社の営業本部マーケティンググループは継続的にマーケティング調査を行っているが、コロナ禍で変化した旅行ニーズに着目し、インタビュー調査でニーズ把握や価格調査を行った。
その中で、静粛性やプライバシーが確保され、通話やウェブ会議が気兼ねなくできる環境であれば、追加料金を払ってもよいと考える人が一定数いることが分かり、上級クラス座席の検討に着手した。前述のように東京~新大阪間が約4万~6万円という、安いとはいえないサービスだが、さまざまなサービスと比較検討を重ね、決定した値付けという。
例えば、羽田~伊丹間の航空便では、JAL・ANAともファーストクラス(フレックス価格)は5万円強だ。個室ではないもののゆったりとしたシート、機内食などのサービスを、スプリームクラスが意識しているのは間違いない。
ただし、「航空機の乗客を奪うことが目的ではない」とJR東海の担当者は語る。そもそも東京~博多間を除けば新幹線のシェアは十分に高く、1編成あたり2部屋しかないCabinでファーストクラスの需要を奪う必要はない。既にグリーン車を利用している人が、さらなるサービスを求めて選択する上級クラスという位置づけだ。
東海道新幹線にはかつて、国鉄末期から民営化直後に製造された「100系」の2階建て車両にグリーン個室が存在した。書斎風のビジネス個室と、グループ利用向けのソファー個室があり、後者は可動間仕切りを取り外せば最大6人で利用できた。
しかし、2階建て車両は重量や重心の関係で最高速度時速270キロ化・「のぞみ」運行開始に対応できず、以降の車両には設定されなかった。「こだま」「ひかり」として運行された100系は2003年に引退し、グリーン個室は姿を消した。では、23年ぶりの個室サービスであるCabinは、グリーン個室の「復活」と言えるのだろうか。
JR東海にその疑問をぶつけると、「確かに検討にあたりグリーン個室のサービスを調べ直した」と明かした。とはいえ、グリーン個室は「個室」ではあるが、あくまでも「グリーン車」である。サービス水準は座席のグリーン車と同等の位置づけだった。スプリームクラスは(半)個室である以上に、上級クラスとしての性格を重視している。
JR東海はサービス内容、価格ともに自信を見せるが、比較対象の無い取り組みだけに、誰がどのように、どれくらいの頻度で使うか、蓋を開けてみないと分からない。しばらくは設定本数が少ないため、選択肢から外れてしまったり、あるいは特定の列車に需要が集中して予約が困難になったりということも考えられる。
いずれにせよ、これまでになかった新たな利用スタイルの定着には時間がかかるだろう。じっくり育てて大きな花を咲かせられるか、まずは10月1日のサービス開始を楽しみにしたい。







