Photo:PIXTA
2026年は、鉄道会社が金融事業に本腰を入れるターニングポイントの年となる。東日本旅客鉄道(JR東日本)はSuicaを大幅に進化させ、コード決済「teppay(テッペイ)」を導入すると発表した。関東私鉄各社のPASMOでもテッペイが順次利用可能になる。PayPayや楽天ペイなど強力なライバルがひしめく中、鉄道系の決済サービスが存在感を高めることはできるのか。鉄道系決済サービスには「明らかなネック」がある。特集『総予測2026』の本稿では、このネックの正体とともに、継続的に利用者からの支持を得るための条件を示す。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
JR東がコード決済をスタート
「スイカ経済圏」拡大へ
2026年は鉄道会社の金融事業が本格化する1年になる。25年11月、東日本旅客鉄道(JR東日本)が交通系ICカードであるSuica(スイカ)の機能強化を発表。誕生から25年目となる26年秋に、上限額2万円を大きく改定し、30万円までのチャージができるコード決済サービス「teppay(テッペイ)」に進化させるのだ。
26年春からは東急電鉄、西武鉄道、東京メトロ、小田急電鉄といった関東の私鉄11社で、クレジットカードによる決済乗車の相互利用が可能となる。さらに27年の春以降は、モバイルPASMOでもテッペイが利用できるようになる。鉄道業界全体において、これまでの少額決済から、クレジットカード並みの決済手段へと大胆な転換を狙う。
中でもJR東日本は、モバイルSuicaの発行数を現在の約4000万枚から31年度までに7000万枚に増やすという意欲的な目標を打ち立てた。背景には、「スイカ経済圏」を広げていくことで、非鉄道事業を強化する狙いがある。コロナ禍では利用客が蒸発し、鉄道依存からの脱却が経営課題となっていたからだ。
スイカを中心としたJR東日本の金融事業は、鉄道会社から大きく変革する中での中核に位置付けられるが、キャッシュレス決済は強力なライバルがひしめく弱肉強食の世界だ。スイカは今さら大化けできるのか。鉄道系決済サービスには「明らかなネック」がある。次ページでは、このネックの正体とともに、継続的に利用者からの支持を得るための条件を示す。







