イマーシブ・フォート閉鎖の真相
――「イマーシブ・フォート東京」のクローズは残念でした。世界のどこにもないエンターテイメントゆえに、需要予測が難しかったということでしょうか。
「誰かが最初にフグを食わないと、フグは食えるようにはならない。ベンチマークになるデータがない中で需要予測をすると大きく外すリスクがあることは、10年以上前から私が著作に詳述したとおり分かっていました。しかし、誰かがその最初のリスクを取らねばライブエンターテイメントは前に進まないと考えていました。そういうことに挑戦する超攻撃型ベンチャーとして私は刀をつくった。そしてその需要予測を見事に外しました。大きな損失を出したことは、経営者として刀の関係者の皆様に大変申し訳ないと思っています。しかしながら、我々はイマーシブエンターテイメントについての深い知見を練り上げて、何十万人もの熱狂的なファンを作ることができました。箱のサイズさえ適切だったら、その集客があれば利益を出しながら持続できる。しかし、すでに大量出血しているわけで、難しい局面に入り込んでしまったというのが正直なところです」
――ヴィーナスフォートは、延べ床面積69,800㎡、店舗数約160店、駐車場台数470台の巨大な施設でした。「居抜き」で入ることで初期投資を抑えられるというメリットはありましたが、さすがに規模が大きすぎたということですか。
「結果論にはなりますが、あそこまで巨大な箱はいらなかったということです。ちゃんと需要にあった適切な床面積のところを選ぶべきだった。箱選びからもう1回やったら、次は確実に当てる自信があります。なぜなら、もうベンチマークのデータがあるから。次は需要予測を外しません。
最終日、閉じる瞬間まで、実は私はずっと会場にいました。最後までプロ意識で頑張ってくれた演者の皆さんが、最後にゲストをお見送りする演出にしたんです。見送られるゲストたちが、名残り惜しんで泣いてくれている様子をみて、本当に申し訳なくて心が裂かれるような痛みと悔しさを覚えました。一生忘れない。あの光景っていうのは、ありありと、まざまざと、いつでも思い浮かびます。これも眩の裏に焼き付けました。
一方、ライブエンターテイメントで、ここまで動員できたことは一つの実績と感じており、学びでもありました。人気の高かった「ザ・シャーロック」は、延べ28万人を動員しました。「江戸花魁奇譚」は全2,721公演で、通算稼働率が94%。リニューアル後に導入された「真夜中の晩餐会」は、24,800円という高価格にもかかわらず稼働率87%を記録しました。これで利益が出ないっていうのは、ビジネスの構造上の問題です。演者のせいでも、運営で頑張ってくれた現場のスタッフのせいでもなく、我々の需要予測が外れた結果です。それは完全に経営の責任だと考えています。
でもその一歩を踏み出したおかげで得たものも多かった。あれだけのエンターテイメントを自社のみで工夫して作り上げて得たノウハウというのは大きい。世界のどこにもないライブエンターテイメントを集積した需要予測のベンチマークデータを、今は持っているわけですよ。そういうノウハウを生かしていく未来を作れれば、あの挫折は活きる。あれがあったからこそ今日があるという未来を創りたいと思っています。
(後編に続く)






