7月25日に沖縄北部テーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンした。森岡毅率いる株式会社 刀が主体となり、700億円の事業費をかけて創り上げた広大なテーマパークだ。オープンまでの困難に満ちた道程は、森岡CEOの著書『心に折れない刀を持て ジャングリア沖縄、誕生までの挫折と成長の物語』(ダイヤモンド社)に詳しく書かれているが、今回はオープンの模様を現地からレポートしたい。(取材・亀井史夫/ダイヤモンド社)

ジャングリア沖縄がオープンしたとき、森岡CEOが考えたことジャングリア沖縄の入り口にそびえるシンボルツリー

嵐の中の前夜祭

 台風7号の影響で、沖縄本島は激しい雨に見舞われていた。亜熱帯ゆえにスコールのような通り雨は珍しくないが、この日のように雨が1日中降り続くことは稀だ。「この日」とは、ジャングリア沖縄のオープン前夜祭のことだ。日が暮れるとさらに雨足は強くなり、まるで嵐のような風雨になった。しかしインフィニティテラスには数百人の報道陣が押し掛け、主役の登場を今や遅しと待っている。

 スタッフの差す大きな傘に守られて、森岡毅CEOが現れた。

「沖縄というのは晴天率が高く、今日のように1日中雨の日は年間で4パーセント、つまり年に14、15日しかありません。非常に稀な天候に今日は恵まれたと思っています。実はこういう雨が降ると、ダイナソー サファリやバギー ボルテージはスリルが増してより一層楽しめるんですね。ここで都会では味わえない体験をして、最後はスパ ジャングリアですっきりして帰っていただくと最高なのではないかと思います」(森岡CEO)

 森岡CEOのスピーチを聞きながら、不謹慎かもしれないが「刀らしいな」と思ってしまった。ジャングリア沖縄誕生までの道程は、まさに茨の道であった。わずか12人で7年前に生まれたベンチャー企業が、700億円もの資金を集めるということ自体、常識外れだ。それだけでなく、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、計画を根底から揺るがす大事件も重なった。資金繰りは最後まで綱渡りの状態だった。嵐の中で小舟を出航させるようなものだったのだ。

「ここまでの道程は非常に長く、挫折と困難に満ちていました。もうダメかなと思ったことが何度もあります。その度に、多くの方々に支えられて、明日ついにオープンを迎えられます。沖縄をもっと豊かにしたい、そして日本をもっと豊かにしたい。その切なる思いでこのジャングリアはできています。そしてその先に広がっていく日本の観光の可能性に繋がっていくと信じています。一つ一つの課題を解決しながら、一つでも多くの笑顔をつくれるようなパークにしたい。沖縄はもっと伸びるんです。日本ももっと伸びるんです」(森岡CEO)

 スピーチが終わるとスクリーンに映像が映し出され、カウントダウンが始まった。

 5,4,3,2,1,0!

 スクリーンが開くとジャングリアの森から何発もの花火が打ち上げられ、夜空を虹色に染めた。数十人のダンサーがなだれ込み、雨に打たれながら精一杯の笑顔で音楽に合わせて踊る。悲壮感はなく、エネルギーに満ちた船出だった。

 前夜祭の終わりに森岡CEOに話しかけた。

――素晴らしいパークができましたね。感動しました。

 森岡CEOは引き締まった表情で答えた。
「まだまだ、ここからです」