日本の二大トイレメーカーの戦略の違いが際立っている。
飽くなき買収戦略に突き進んでいるのがLIXILグループだ。米国の大手トイレメーカー、アメリカンスタンダード(アメスタ)の北米部門を5億4200万ドル(約542億円)で買収、藤森義明社長兼CEOは、「今回の買収を北米進出の足がかりにしたい」と意欲を見せる。
言葉だけでなく、目標数字も野心的だ。2016年3月期の売上高を3兆円に設定。とりわけ、海外事業拡大への意欲はすさまじく、11年、400億円程度だった海外売上高を「1兆円に引き上げる」(藤森社長)とぶち上げている。
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鍵を握るのがM&Aやアライアンスの積極活用だ。これまでもビル外壁事業を欧米で手がける伊ペルマスティリーザを608億円で買収し、13年3月期の海外売上高は2051億円に拡大。アメスタは09年にアジア部門を買収(取得金額176億円)しており、米国の住宅市場回復を待つ形で、本丸の買収にこぎ着けた。
一方、世界トップのTOTOの海外展開は“自前主義”だ。稼ぎ頭の中国には30年以上前に進出し、メルセデスベンツと並ぶ庶民の憧れのブランドに育て上げた。今では中国に三つのトイレ工場と500店以上の販売代理店網を持つ。8月には新たに内陸の福建省で工場が稼働する予定だ。
最近では、新たなグローバル戦略として「新技術の海外発信」を打ち出している。例えば、光触媒の活用で汚れがつきにくくなる技術を搭載した最高級モデルを、欧米と中国で今夏から秋にかけて発売。これまでは日本で最新技術を導入してから海外に投入していたが、海外工場でも新技術搭載製品が素早く作れるようになったことで、海外でのブランド力を強化するため踏み切ることにした。
背景には、住宅設備機器は海外において、ブランドが重視されるという点がある。日本では工事業者が提示した物を選ぶのに対して、欧米や中国では個人がホームセンターやメーカーショールームに行き、好みの便器を買って業者に取りつけを依頼するスタイルだ。