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住宅建材・設備業界で、役員でもない一社員の転職がひそかに話題を集めている。TOTOの生え抜きの実力者が、最大手LIXILグループに入社した。マーケティング統括や経営企画部門に長く携わり、重要戦略の策定や実行で活躍した人物で、「そうした手腕を買われた」と業界幹部はみる。2強の間で人材が動くのは、実に珍しいことだった。
両社は対照的な戦略を選択してきた。LIXILはトステムやINAX、サンウエーブ工業など建材・設備メーカー5社が2011年に合併し誕生した売上高1兆円超の巨大グループ。その総合力を武器に、メーカーの枠を超えて住宅販売やホームセンター運営にも注力する。15年度売上高3兆円という野心的な目標を掲げ、積極的なM&Aで海外展開を急いでいる。
一方のTOTOは規模を追わない主義。大建工業やYKK APと大型ショールームを造るなど、利益率の高いリフォーム分野で協業を重ね、資本関係を持たない融合で成果を出してきた。
拡大路線をひた走るLIXILで急務となるのが、組織の合理化と融合だ。希望退職を募るなどリストラを進める一方で、出身の異なる従業員4万8000人が意識を共有する必要がある。
融合の担い手に社外からも積極的に人材を採用し、GE出身の藤森義明社長を筆頭に、役員の半数近くは異業種からの転身組だ。さらに今回、融合の成功体験を持つライバル会社社員をも戦力とした。
目下、共同開発商品の投入など、シナジーの創出に本腰を入れているところ。集めた人材を駆使して13年度中にも軌道に乗せなければ、ぶち上げた目標は絵に描いた餅で終わる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)