スタートアップが成功できるか、失敗して消えてしまうか? それを決めるのは、Product Market Fit(PMF:プロダクト・マーケット・フィット/市場で顧客に愛される製品・サービスを作ること)を達成できるかどうかにかかっている。増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』(田所雅之著、ダイヤモンド社)は、起業家の8割が読み、5割が実践する起業本のベストセラー『起業の科学』を9年ぶりに大改訂した最新版本連載では同書から抜粋して、スタートアップの成長を加速するポイントについて、わかりやすくお伝えしていきます

スタートアップが死んでしまう、最大の理由とは?Photo: Adobe Stock

課題検証をおろそかにしない

 以前に紹介したリーンキャンバスによって作成したビジネスモデルのPlan Aは、あくまでオフィスのあるビルから飛び出してユーザーと話す前の「仮説」である。

「仮説」を得た後に、やるべきこととは何か?

 カスタマーが実際にその課題を抱えているのかどうか、生の声を聞きながら検証し、なおかつ単なるアイデアを質の高い課題へと磨き込む必要がある

 カスタマーの持つ真の痛みを探り、それを解決できるアイデアを課題に据えることは、スタートアップがPMFを達成する大前提だ。

 それだけに、解決すべき課題が本当にユーザーに求められているかの検証をスキップしてしまうのは軽率である。

「一見悪く見えて、本当に良いアイデア」
を見つける必要がある

 確かに、課題検証は面倒臭く、多少の時間を要するが、PMF達成というプロジェクト全体で見たときには、ここに時間を費やすことに大きな意味があり、はっきりとデータにも表れている。

 Startup Genome(スタートアップ・ゲノム)が3,200社のインターネット系スタートアップを対象に行ったアンケートによると、PMFを達成したスタートアップの8割は、CPFのステージで「課題の発見と検証」にフォーカスしている。

 一方で、失敗したスタートアップのなんと74%が、初期段階で「プロダクト(解決策)の検証」に時間を割いている

 つまり、課題の検証を十分にせずにいきなりプロダクト開発を行っているのだ。

 これは、プレマチュアスケーリング(時期尚早な拡大)と呼ばれるスタートアップが死んでしまう一番の理由だ。

 これまでの連載の中でスタートアップは、「一見悪く見えて、本当に良いアイデア」を見つける必要があると述べた。

 取り上げたアイデアが実際に良いアイデアかどうかは、これから見ていく課題検証フェーズで、判明していく。

「一見悪く見えて、本当に良いアイデア」は、めったに発見できるものではない。実際に多くのアイデアは一見悪く見え、本当に悪いアイデアだ。

 課題検証の究極の目標は、顧客すらも気づいていない奥に潜む潜在的な課題に光を当て、本当に良いアイデアを見つけ出すことにある。

(本稿は増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2の一部を抜粋・編集したものです)

田所雅之(たどころ・まさゆき)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。
2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』『「起業参謀」の戦略書』(ダイヤモンド社)など。