夏休みの予定は決まりましたか? 今、世界から注目を集める日本の地方のガストロノミーを巡る旅はいかがでしょうか?最も今回は、 話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、今回は北海道の注目エリアや店を紹介していきます。
Photo: Eric Akashi/Adobe Stock
50メートルほどの路地が帯広市の名物に!
焼き鳥、居酒屋、フレンチ、中華、おばんざいなど、わずか50メートルほどの路地に個性豊かな店が軒を連ねる屋台街があります。それが、十勝地方の中心地・帯広市にある「北の屋台」です。
はじまりは2001年。地域を活性化させるために、地元の方々が話し合いを重ねてスタートしました。空き地になった駐車場に20の屋台を作り、「ここにいる間にファンを作って、シャッター街で独立して、十勝を盛り上げていってください」とお願いをしたそうです。設備はすべて備え付けなので初期投資はいりません。その代わり、出店できる期間は3年だけという約束です(今では、3年以上営業している店も一部あるようです)。
ですから、基本的には、各々の店は一生懸命頑張ります。短期間でファンを作ろう。腕を磨こう。独立資金を貯めようと。そうして、北の屋台の食のレベルは年々上がっていき、今ではそこから独立して見事、人気店になった店がいくつもあります。
その最たる例は「マリヨンヌ」というフランス料理店です。通常、料理店は原価が30%を超えると儲からないといわれているのですが、ここはなんと50%以上と思われるような料理を出し、人気を集めてその後、帯広市内で独立しました。
北の屋台は体験型の社交空間
私が考える北の屋台の魅力は、ここが単なる店の集積ではないということです。各々の店が独立して存在しているのではなく、一丸となって、「北の屋台」という空間や居場所を作り出しているのです。
たとえば、一人でふらりと立ち寄っても、カウンターに座った瞬間から自然と会話が生まれるような、温かさがあります。隣に座ったのが生産者だったり、地元で人気の料理人だったり、旅の途中の人だったり。偶然の出会いが、思いがけない体験として心に残ります。
店主とおしゃべりしながら、その日入ったばかりの旬の食材について教えてもらったり、他の屋台の料理を[※]出前で取り寄せてフードフェスのように楽しんだり。「今日は寒いね」と一言言えば、気づけばみんなで笑い合っている。店主が店に来たら「昨日話したジャガイモです」とメモされた大箱が置かれていたこともあるそうです。
そんなふうに、店と客、客と客が自然とつながる体験型の社交空間がここにはあります。食べる、話す、つながる。この3つがセットになったこの場所では、ただ食事をするだけではなく、その土地の人々と文化に参加することができるのです。
北の屋台を盛り上げる立役者「北海道ホテル」という存在
北の屋台が盛り上がりを見せている帯広の立役者に「北海道ホテル」があります。
北海道ホテルは、オーナー自身が好きということもあり、本格的なフィンランド式サウナをブームの初期からとりいれている、サウナーの聖地として有名です。
そして北海道ホテルには、「エゾマエ」と呼ばれる、北海道でとれた食材だけで天ぷらを作る「蝦夷天ぷら 鶴来(つるぎ)」があるのです。
これがまた格別なため、サウナを楽しむ→鶴来でエゾマエ天ぷらを堪能するというルートが確立されました。強い引き寄せが築かれたことで、「じゃあ、せっかくだから北の屋台にも行こう」「北の屋台に行くなら、ついでに北海道ホテルに泊まろう」というように、“面”として、十勝全体で大きな魅力を放っています。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。この記事の情報は、本書の発売時のものになります。






