かつてのアメリカンドリームの仕事は消え失せ、労働者たちは絶望。鎮痛剤として処方が認可された麻薬の成分を含んだ「オピオイド」による中毒死が、毎年数万人に上っています。これはもう「絶望死」です。
全米で見ると、薬物中毒による死亡者の多い地域は、トランプが高い得票を上げている地域と重なっています。アメリカの現状に「絶望」した人たちが、トランプに投票していることがうかがえます。まさにアメリカの分断の結果なのです。
2020年の大統領選挙で民主党のバイデンが勝利した520の郡の全米のGDPに占める割合は71%に達しているのに対し、トランプが勝った2564郡が占める割合は29%でした。
「バイデンに多くの票が入る地域がいかに繁栄して豊かな人びとが住み、トランプ支持者が多い地域がいかにさびれて停滞しているのかを如実に示している」
トランプ現象は、現状に絶望した貧困層による一種の「革命」なのです。
<会田弘継『それでもなぜ、トランプは支持されるのか アメリカ地殻変動の思想史』東洋経済新報社、2024年>
アメリカ国民25%は聖書を一字一句信じている
『福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会』
2024年10月、アメリカ大統領選挙取材のためにテキサスに入ったとき、福音派の女性と会いました。父親がカナダ系アメリカ人、母親が日本人で、日本語も流暢でした。彼女と聖書の話になったとき、『旧約聖書』の中に出てくる「ノアの方舟」の話になりました。神様が大雨を降らして人間たちを絶滅させようとしますが、敬虔なノアの一族だけは助けてやろうと考え、雨が入ってこない屋根のある船を作って助かるようにと命じたという話です。
彼女が私に問いかけます。「ノアが船に入ったとき、誰が扉を閉めたと思いますか?」
私が「ノアが内側から閉めたんでしょ?」と答えたら、「そうではないんです。神様が外から扉を閉めてくださったのです」と真顔で言うではありませんか。「福音派」とは聖書に書かれていることがすべて真実だと信じている人たちと言われますが、まさにそうだったのです。







