私たちは「ノアの方舟」の話を神話として受け止めますが、彼らにとっては、本当にあった話なのです。
「福音派」の「福音」とは、「救い主イエスが到来した良い知らせ」という意味です。『新約聖書』には「マタイによる福音書」など4つの福音書が掲載されています。
アメリカの国民の約4分の1は、聖書の内容を一字一句真実だと信じている福音派だと聞くと、科学的なものの見方を教育された私たちには信じられないのですが、事実なのですね。
アメリカでトランプ大統領が誕生したのは、福音派の支持があったからと言われます。あまり敬虔には見えないトランプ氏を、なぜ敬虔な福音派の人たちは応援したのか。そこには「世界が終末を迎え、イエスの再臨も近い」と信じる人たちにとって、LGBTQという性の多様性を認めようとしている人たちは「サタン」であり、それを阻止するためにトランプ氏のもとに結集したことがわかります。
科学的知識を持った知的エリートたちが、非科学的なことを信じる福音派を上から目線でバカにする。それに猛然と反発する福音派の人たちが、メガチャーチと呼ばれる巨大教会でのミサで信仰心を高める日々。日本にいると理解できない福音派について、その成り立ちから解説してくれる書です。
<加藤喜之『福音派 終末論に引き裂かれるアメリカ社会』中公新書、2025年>
ワクチン接種すら政治問題になってしまう国
『自由の国と感染症 法制度が映すアメリカのイデオロギー』
新型コロナ禍のアメリカでは、ワクチン接種に反対する人たちが多いことがニュースになりました。民主党支持者の多くがワクチンを接種しているのに対し、共和党支持者の接種の割合は高くありません。個人の自由を大切にする共和党支持者と、社会防衛のためなら個人の自由が制限されても仕方がないと考える民主党支持者の見解の違いです。
アメリカでワクチン接種に反対する人がいるのは、コロナに限ったことではありません。本書によると、天然痘のワクチン接種をめぐっても対立が起きていたというのです。ワクチン接種に反対する理由は2つ。基本的権利を重視する考え方と宗教的信念です。







