でも、それを忙しい人たちに勧めるのにはためらいがあります。私も日本語訳で勉強しましたが、悪戦苦闘した経験があるからです。
というのも、『コーラン』の中身は、アッラー(神)が人間の代表としてムハンマドを預言者(神の言葉を預かる人)に選び、伝えた内容を収録したものだからです。
神は、どのようなときに、どのような考えを持って、神聖なる言葉を伝えたのか。そこは、きちんとした解説者の助けを借りると理解しやすいのです。
同じことを考えたのが、この本の著者。ロンドン在住のアメリカ人女性ジャーナリストです。彼女がインド出身の著名なイスラム学者に対し、『コーラン』の中身について素朴な質問を繰り返すことで、イスラム教について理解しようと試みた成果が、この本です。
フェミニズムに傾倒する著者は、イスラム教が女性の立場を低く見ているのではないかという疑問をぶつけます。その答えは驚くべきものでした。
ムハンマドの時代、男女は極めて平等であり、女性たちの活躍があったのに、その後の保守的な社会の慣習で、歪められてしまったというのです。そもそも、ほとんどのイスラム教徒は『コーラン』を読んでいない。過激派は、原典を読むことがないまま、勝手な解釈を説く扇動者に動かされてしまうのです。
宗教的知識のないジャーナリストが、学識豊かな専門家と対話を繰り返す。この本は、イスラム教に関する解説書というよりは、知的興味を喚起してくれる推理小説のような書物です。
<カーラ・パワー『コーランには本当は何が書かれていたか?』秋山淑子訳、文藝春秋、2015年>
イスラム国を生んだ政治思想とは?
『イスラーム国の衝撃』
2015年、日本人人質の殺害で日本に大きな衝撃を与えた「イスラム国」(「イスラーム国」とも表記)。ジャーナリストの後藤健二さんとは十数年来の知人だっただけに、個人的にも辛い出来事でした。彼らは、なぜ、あんなに残虐なことができたのか、そしてなぜ勢力を拡大できたのでしょうか。







