逮捕に至るきっかけは、内部通報だった。これを基に日産自動車は社内調査を開始。数カ月に及ぶ調査により、ゴーン氏の不正を明らかにした。不正の内容は以下の3つだ。

[1]開示される報酬額を少なくするため、実際の報酬額よりも少ない虚偽の金額を有価証券報告書に記載した。
[2]私的な目的のために、社内の投資資金を使用した。
[3]社内の経費を不正使用した。

 日産自動車は社内調査の内容を検察に報告。並行して検察側が捜査を進め、同日にゴーン氏が海外から日本に到着するスケジュールを押さえて、検察は逮捕に踏み切った。

 一方、日産自動車社内では、これらの不正が善管注意義務(善良な管理者の注意義務)に違反しているほか、「解任に値する重大な不正行為である」という弁護士の意見も踏まえ、同社社長兼CEO(当時)の西川氏は11月22日に開く予定となっている取締役会でゴーン氏の会長と代表取締役の解任を提案すると、同月19日22時から横浜市にある本社で開いた記者会見で語った。

ゴーン氏会見ゴーン氏の弁護団が2019年4月に日本外国特派員協会(東京)で開いた会見で公開したゴーン氏の動画メッセージ。無罪を訴えた(出所:ゴーン氏の弁護団提供の動画キャプチャー)


 社内調査は秘匿性をもって進められ、内部通報から状況を把握していたのは数人だけ。役員ですら直近まで知らなかった状況であり、従業員は逮捕当日まで何も知らされていなかった。報道で初めてゴーン氏の逮捕を知った社内には動揺が広がった。

 ゴーン氏はカリスマ経営者だったのか、それとも暴君だったのか──。会見で筆者がこのように質問したところ、西川氏はこう回答した。

「他の人にはできなかった大きな改革を成し遂げた実績は紛れもない事実だ。紡いできたことを全否定はできない。功罪の両面がある」

信賞必罰の人事も自分は例外

 ゴーン氏の経営の代名詞は「コミットメント」。必達目標を明確に設定し、それを計画通りに達成することを強く求める。その上で、結果に対して厳しく責任を負わせる。当時、日産自動車で部長を務めていたある社員はこう証言する。

「目標を口にすれば必ず、『それはコミットメントか?』と問われる。コミットメントだと言えば最後、達成できなければポストを失い、別の人がそのポストに座る」

 コミットメント経営と成果主義による人事は、確かに経営危機から日産自動車を救った。