こうして番組収録のリハーサルがおこなわれる。

 これまで数回の公演がおこなわれてきたが、なぜ、この日までリハーサルと収録をしていなかったのか?

 不思議に思われた方にご説明すると、これにはテレビマンの強い目的意識があったのである。

新しい映像技術へのこだわり
マイケルはすぐに気づいた

 棚次ディレクターは収録に失敗があってはいけない、と慎重を期して、カメラやミキサーたち、そして自分のため、これまでの本番の公演をあえて、下見やリハーサルに使わせていただくことにした。

 しかし、横浜の前に後楽園スタジアムがあったではないか……なぜ9月12日の初日の後楽園でリハーサル、13日の本番をやらなかったか?

 じつは思いもよらない事実があったのである。

 そのころテレビ界の中継班では、常に次の新しい映像手法を採り入れようと躍起になっていた。私も棚次Dもなにか新しい映像手法をこの機会に採り入れたいと願っていた。

 そのころ、まだ誰も使ったことのない、スカイカムという空飛ぶカメラ(といってもいまのドローンではなく、ケーブルに吊るした俯瞰の撮れるカメラのこと)を使いたくて仕方なかった。

 それには、文京区の消防に許可を取らねばいけない。早速、報道のベテランが走った。

……が、返事は「ダメ!」「どうして?」「もし落ちたらどうする!」「それはそうだ。」

……ということで、カメラをより軽くし、スカイカム社とよく相談して落下しない絶対安全の確信をとって、次回の公演スタジアムに変更しようとしたが、「待てよ次は関西ではないか、仕方ない横浜まで待とう」となった。

 今度は横浜スタジアムの所在する、横浜市に行って、許可を取らねばならない。

 当時だからかもしれないが、ある市議によく説明すると、「十分過ぎる安全を守れるなら」という条件でOKにしてくれた。おおらかな時代だったのである。

 そして、横浜スタジアムでの収録をスケジューリングし、9月25日に下見、26日にカメリハ、27日に収録と変更になったのである。

 マイケルも少し日にちが経ったほうが日本に慣れるだろう、と勝手に解釈して、じつはスカイカムの映像に魅力を感じていたし、世界のマイケルを撮るなら、満足いく手法で撮ろう、というテレビマンたちの目的意識も大切にしたかった。

 パフォーマンス中のマイケルがスカイカムにすぐ気づき、終わってから「あのカメラははじめて見たよ。すごく気に入った。もう少し僕の顔の近くを通ってくれたら、パフォーマンスできる!」と演出側に言ってきた。