写真:シニア男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「お母さんの財産は、法律どおり半分ずつだろう!」――神奈川県鎌倉市在住の石田のり子さん(仮名・82歳)が脳梗塞で倒れ、入院した直後から兄弟げんかが始まりました。しかし、のり子さんは「争族」を見越して、すでに一枚の遺言書を用意していました。その遺言書は、兄弟の関係を守っただけでなく、二次相続時にまで配慮したものでした。(執筆/ライター 岩田いく実、監修/いちよう相続・税務サポート 田澤広貴税理士)

夫に先立たれた80代女性
一人で抱える「2億円の財産」

 のり子さんの夫は5年前に他界しました。その際の一次相続では「配偶者の税額控除」を生かすことになり、のり子さんは夫所有の財産をすべて取得することになりました。

 内訳は鎌倉市の自宅不動産(評価額7000万円)や借地、預貯金を合わせて約1億8000万円。もともと持っていた自身の財産2000万円と合わせ、相続後の総資産は約2億円にのぼりました。

 子どもは長男・健一さん(仮名)と次男・誠司さん(仮名)の2人。のり子さんが亡くなった場合、これが「二次相続」となり、健一さんと誠司さんが相続人となります。のり子さんは夫の死をきっかけに、自分が亡くなった後のことを真剣に考えるようになっていました。

入院をきっかけに
兄弟の不仲が表面化した

 のり子さんが脳梗塞で入院したのは、2024年の初夏のことでした。幸い命に別条はなかったものの、脳梗塞で倒れた際に右ひざを骨折。退院後は介護が必要な状態でした。健一さんは「俺が母親の面倒を見る」と申し出て、のり子さんの自宅で同居を始めました。

 ところがこれが、兄弟の亀裂の始まりでした。誠司さんは「兄貴が同居して、母親の財産を全部握ろうとしている」と疑念を抱くようになったのです。

 兄弟の言い争いが増え、ついには「法定相続分どおり、財産は半分ずつだ。もし兄貴が家を相続するなら、財産に差がつくのだから、その分代償金を払え」と突きつけるまでになりました。

 健一さんも「俺は仕事を調整して母親の世話をしている。お前は何もしていないだろう」と一歩も引かず、兄弟の関係は険悪になっていきました。