実は、この報告書はポッティンジャーが政府の政策決定に関わる未来を示唆していた。ジャーナリストから軍人へ転身した彼は、やがて型破りな新大統領のホワイトハウスでの顧問として活躍し、国家安全保障と中国問題における実績を武器に、世界第2位の経済大国に対するアメリカのアプローチの改革に大きな影響力を及ぼすことになる。

中国を再訪して見えた
豊かな社会の腐ったシステム

 とりわけポッティンジャーの中国政府への幻滅は、中国に対する技術的優位性を維持しようとするトランプ政権の方針を後押しした。この対中強硬路線は、2016年の大統領選後に浮上したグローバリゼーション見直しによるもので、従来型のアプローチの支持者に再考を促すとともに、ポッティンジャーやロリ・ウォラック(編集部注/弁護士。公正な貿易政策とグローバル化の是正を主張し、アメリカ経済自由化プロジェクト“American Economic Liberties Project”で、公正な貿易政策を推進する「Rethink Trade」プログラムのディレクターを務める)のような長年のアメリカの政策批判者たちに新たな可能性を開いた。当初は世界統合プロセスの一時停止でしかないと思われた動きは、過去数十年続いた従来の政策との真の決別へと発展する。

 ポッティンジャーは2010年に軍の現役勤務を退き、ニューヨークに移った。その後、中国企業に対する適正評価を行う小さな調査会社、チャイナ・シックスLLCを立ち上げた。「自分の将来に迷っていた。5年間の戦闘任務から解放され、アメリカの生活に再び慣れるための助走期間とでも言おうか。つらい1年だった」と彼は語っている。

 中国人ジャーナリストを雇って調査を行わせたほか、ポッティンジャーは自らも中国を何度か再訪した。そこで見た光景は彼を驚かせた。2000年代初頭の行け行けムード、中国全土が躍進期にあったときの熱狂は、国家資本主義体制の根本的欠陥への厳しい現実認識に変質していた。