国民の生活水準はたしかに向上していた。しかしそれ以上に、政府内の関係者やコネを持つ者など一部だけが莫大な富を手にしていたのだ。
「まるで欲望が暴走しているようだった。多くの中国の友人たちは大金を稼いでいたが、かといって幸せではなく、北京で子供を育てたがらなかった。彼らはシステムが腐っていると口をそろえた。そのシステムで成功した者たちでさえ、そう言っていた」と彼は語った。「そして、多くの中国の友人やかつての同僚たちが、海外に移住していることがわかった。オーストラリアやアメリカに移っていた。それはさびしいことだった」
「恒大集団は砂上の楼閣」
近い未来の破綻が見えた
ポッティンジャーの調査対象の一つが、中国最大の不動産開発企業である恒大集団だった。商業用衛星写真を分析し、同社の高層マンションを精査した結果、恒大が国有銀行からの借入のために自己資産を過大評価していることがわかった。評価対象には湿地帯やゴミ捨て場が含まれ、未完成のマンションも完成物件として帳簿に記載されていた。
未販売物件しかない巨大な開発地を訪れたポッティンジャーは、恒大の営業担当者にしつこく質問を重ねて警戒された。「彼らは私の行動を疑い始めた。そして尾行された。車に戻ったあと、北京までずっと追いかけられた」と彼は語った。ポッティンジャーは、恒大集団は「砂上の楼閣」であり、10年後になるかもしれないが破綻は避けられないとする、先見の明ある報告書を投資家に向けて出した。
数年後、ポッティンジャーはクライアントであるヘッジファンド、デイビッドソン・ケンプナー・キャピタル・マネジメント(編集部注/ニューヨークに拠点を置く大手オルタナティブ投資・ヘッジファンド運用会社)の依頼を受け、適正評価業務を中国以外にも拡大した。
政府での勤務経験はゼロ
それでも政権入りを要請された
そのさなか、2016年の大統領選後にフリンから連絡があり、トランプに中国と北朝鮮について教えるのを手伝ってほしいと求められた(編集部注/フリンは大統領選前はトランプの軍事顧問として雇われ、政権発足後は国家安全保障担当補佐官に就いた)。
12月初旬、ポッティンジャーはオフィスから近いトランプタワーまで歩いて向かった。トランプとは初対面だったが、すぐに彼が軍人とはまったく違う会議の進め方をすることに気づいた。







