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2000年の米大統領選では共和党と民主党の支持がほぼ拮抗していたテネシー州オビオン郡。しかし16年後、この地域では有権者の約8割がドナルド・トランプ氏に票を投じた。背景にあったのは、地域経済を支えてきたグッドイヤー工場の閉鎖と、中国製タイヤの流入をはじめとするグローバリゼーションの波だった。1900人の雇用が失われた町で何が起き、人々はなぜ政治的選択を変えたのか。その軌跡をたどる。※本稿は、デイヴィッド・J・リンチ著、寺尾時彦訳『グローバリゼーションは失敗だったのか 上』(原書房)の一部を抜粋・編集したものです。
高卒労働者に
10万ドルを払う職場
ケント・グリアは1989年、テネシー州オビオン郡にあるグッドイヤー(編集部注/世界最大のタイヤ会社の一つ)のタイヤ工場で働き始めた。仕事は暑くて大変だったが、その職に就けて喜んでいた。100ポンド(45キログラム)の荷物を持ち上げる作業。耳栓をしていても聞こえ、響いてくる絶え間ない機械の轟音。タイヤに特徴的な色をつけるカーボンブラックの煤が顔や髪に付着する。
1969年に工場が開設されて以来、グッドイヤーはこの地方の郡で最大の雇用主だった。この工場では、何千万台ものアメリカの自動車やトラック用のタイヤが製造されていた。約200マイル(320キロメートル)離れたケンタッキー州ボーリング・グリーンにあるシボレーの工場で生産されるすべてのコルベットは、グリアと彼の同僚たちがつくったタイヤをつけていた。
ユニオンシティ郊外に位置するグッドイヤーの200万平方フィート(0.2平方キロメートル)に及ぶ広大な施設は、この地域で最も給与が高い仕事を提供していた。当時、労働力はほぼ男性だけで構成されていたが、高校を卒業した男性は家族を養うのに十分な高給の職に就くことができた。2000年代初めには、年収8万ドルも不可能ではなかった。残業代も入れれば年に10万ドルを稼ぐ労働者もいた。







