総予測2026Photo:Pool/gettyimages

米中対立が関税措置の先送りなどで小康状態に向かいつつあるものの、内需に不安を抱える2026年の中国経済は、かつてほどの高成長が期待できない状況だ。特集『総予測2026』の本稿では、26年の中国経済の行方と、昨今の日中関係悪化の日本経済への影響を展望する。(大和総研主席研究員 齋藤尚登)

家電・自動車買い替え補助金も息切れ
26年の中国経済は4.4%成長に減速

 2025年の中国経済は「トランプ関税2.0」の悪影響が限定的であったこと、家電・自動車の買い替えへの補助金政策が奏功したことなどにより、前年比4.9%程度の実質成長を遂げたもようだ。政府目標の成長率5%前後を辛うじて達成した可能性が高い。

 26年の中国経済は減速傾向を強めよう。耐久消費財への補助金政策の一巡による反動減や、不動産不況の継続などにより、内需は厳しい状況が続こう。大和総研は4.4%成長への減速を予想する。

 消費は24年9月以降に本格化した家電と自動車の買い替え促進策の効果が一巡し、反動減が懸念される。24年7月発表の消費財買い替えへの支援強化措置は、個人が冷蔵庫やテレビ、パソコンなどを買い替える際に、最大で価格の20%(1台当たり最大2000元)の補助金を支給した。

 補助金政策は25年も継続され、家電の販売金額は24年9月以降に急増したものの、効果は既に一巡した。25年1~10月の家電・音響映像機材の販売金額は前年同月比20.1%増となったものの、単月の伸び率は5月の53.0%増をピークに低下し、10月は14.6%減と大幅なマイナスとなった。一部都市で補助金が払底し、政策が継続できなくなったことも響いた(下図参照)。

 自動車については、24年7月の措置によって、ガソリン車の補助金は従来の7000元から1.5万元に、EV(電気自動車)は1万元から2万元に増額され、25年も維持された。

 25年1~10月の自動車販売台数は同12.4%増と好調だったが、販売金額は0.2%減と低迷した。台数では政策効果が出ているが、金額が増えないのは「内巻」(破滅的な競争)と呼ばれる熾烈な価格競争によるものである。

 26年の懸念材料は、好調だったNEV(新エネルギー車)の販売低迷である。NEVのみが享受している車両購入税(価格の10%)の免税措置が25年末で終了し、26年には5%の車両購入税が課税予定のためだ。26年の自動車販売台数は急減速、あるいは減少に転じる可能性が高い。

家電・自動車買い替え補助金の反動減や不動産不況など内需が厳しい状況が続く中国経済。次ページでは、26年の中国経済の見通しや課題、日中関係悪化による日本経済への影響を展望する。