上海米国商工会議所の2023年の調査によると、40パーセントの企業が中国からほかの市場に投資を振り向けている。これはトランプ政権での貿易戦争が頂点に達した2018年と比べても倍の割合である。アップルも製造拠点を複数国に分散させようとしていて、iPhone生産の一部をインドとベトナムに移している。

貿易が民主主義を広げる
「賭け」は失敗だった

 ロシアのミサイルがウクライナを襲い、中国が独裁体制に陥る状況を見ると、アメリカの政策立案者がかつてこれらの独裁国家がアメリカ主導の国際システムに参加すると信じていたことが不思議に思えてくる。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領がかつて「可能性と希望の時代」と呼んだ世界は、混乱と危険に満ちた時代に変容してしまった。

 ワシントンの政治風土は今や全面的に反中国だ。かつて、この新興のライバル国をアメリカ主導の世界経済に統合しようという機運があったが、それは貿易の拡大が中国の経済、政治システムの自由化を促すという知的正当性もろともに、すっかり消え失せてしまった。おそらく、少なくとも習近平が支配しているあいだは、最悪の事態を避けることが望める最善の道なのだろう。

『グローバリゼーションは失敗だったのか 下』書影グローバリゼーションは失敗だったのか 下』(デイヴィッド・J・リンチ著、寺尾時彦訳、原書房)

 フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員は2度目のトランプ政権で国務長官に就任する前、上院外交委員会公聴会でアメリカ主導のグローバリゼーションが四半世紀にわたって歩んできた道筋を振り返った。ルビオは少し誇張して、この一世代にわたるアメリカの外交政策は、貿易による各国の結びつきが繁栄、民主主義、自由、平和をもたらすという「賭け」を前提としてきたと述べた。

 富はたしかに増えた。ルビオはそれを認めた。しかし、中国もロシアも、より民主的になったわけでも、より平和になったわけでもない。実際には、両国とも独裁的支配を強化している。ロシアは2014年と2022年の2度にわたりウクライナに侵攻した。中国は南シナ海を軍事化し、必要ならば武力によってでも台湾の支配権を取り戻すと宣言している。

「この賭けは失敗したと言っていいと思う」とルビオは述べた。「私たちは今、新たな時代に入ろうとしている」