加入希望者をくじで分けた
オレゴン州の医療保険実験
そんななか、アメリカ・オレゴン州で、研究者にとって非常に興味深い状況が生まれました。これがオレゴン医療保険実験と呼ばれる、医療政策を対象にした世界的にも珍しいランダム化比較試験です。
オレゴン州では2008年、低所得者向けの公的保険「メディケイド」に新たに加入できる枠を設けることになりました。しかし予算に限りがあったため、希望者全員を受け入れることはできませんでした。
そこで州政府は思い切った方法をとります。抽選で、加入する資格を与える対象者を決めることにしたのです。この「くじ引き」によって、似たような境遇の人たちが、「保険に加入する権利を得たグループ」と「得られなかったグループ」に分かれることになりました。まさに自然にランダム化された比較試験の形が整ったのです。
研究者たちはこの状況を逃さず、くじ引きの対象者を追跡調査しました。
保険に入ると
外来受診は50%増
オレゴン実験の分析からまず明らかになったのは、保険に加入できた人は、医療へのアクセスが格段に向上し、外来受診や予防医療の利用が大幅に増加したという点です。
抽選で保険を得た人は、得られなかった人に比べて、1~2年の間に平均で約2.7回多く外来を受診しており、未加入者の年間平均受診回数が約5.5回であったことを考えると、ほぼ50%の増加に相当します。また、処方薬の利用も増加し、使用する薬の種類もやや増えました。
救急外来の利用でも同様の傾向が見られ、少なくとも1回救急外来を利用した人の割合はおよそ7%ポイント増加し、もとの利用率34.5%に対して約20%の相対的増加となっています。
救急外来の年間利用回数も増え、もとの利用数が1.02回であったところから、0.41回ほど増加しました。特に、緊急性が低い症状や予防可能な症状、夜間や週末など通常診療時間外の受診が増えていましたが、重篤な緊急事態で入院に至るケースの明確な増加は見られませんでした。







