
文は全財産を直美に託した
「こちらの神様にはとてもお世話になったので。ここに来た頃が一番幸せだった…」。しみじみ語る文。
ここでようやく「浦崎八幡神社」の名前が出て、直美のお守りの神社であることがはっきりする。
文の故郷・熱海の浦崎八幡神社。安産にご利益があるという架空の神社で、ロケ地は沼津市戸田諸口神社だ。航海、漁業者の守護神だそう。生えている樹木がヤシの木のような、少し南国風で、温暖な地域であることがわかる。
「これまで随分、努力なさったんですね。横浜の教会で捨てられていた子がこんな立派な看護婦さんになって…。私のような者とはまるで違う。あなたならきっと大丈夫」
文は直美にそう語る。
このあと文と直美はどうなったか。そこは描かれず、直美は静かに帰宅する。
環(英茉)がうたた寝している。その安らかな顔をなでる直美。
その晩、直美は美津(水野美紀)と縁側で語らう。
「なんででしょう。寝てるときが一番可愛い気がします」と直美が尋ねると、「それは簡単。親だから。不思議なもので、我が子の安心しきった寝顔というのは、どういうわけか可愛く見えるものです」と美津は答える。
第84回で文が直美の寝顔を見つめていたときの気持ちがここで代弁されたかのようだ。
直美が環の二人目の母ならば、直美の二人目の母だと美津が言うと、直美はせきを切ったように泣きだす。
「よくやりました。よく頑張りました」。美津は直美の肩を包むようにさする。
おそらく神社では直美は泣くのを堪えていたのであろう。文と直美は、結局、母子と名乗りあったのだろうか。
場面が変わって、瑞穂屋。卯三郎(坂東彌十郎)が文から預かったものを直美に手渡す。第82回のラストに出てきた謎のキャニスターである。
「文さんの全財産です」
看護費用として渡してほしいと頼まれていたと言う。
この感じ、もしかして、文はすでに亡くなっている?美津の前で泣いたのは、文を看取ったあとのこと?詳細は描かれないまま、直美は文の遺産を手にすることになる。
「いただけません。私、そんなつもりで看たわけじゃ…」と言って、はたと「私のために…?」と気づく直美。
借金があるとかお金がもったいないとか言っていたのは、捨てた娘のためにお金をずっと貯めていたのだろう。小さなキャニスターのなかにぎっしり詰まったお札が文のせいいっぱいの愛情だ。







