『風、薫る』第76回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第76回(2026年7月13日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)
りんと直美の料理シーン
第16週「新風吹くころ」(演出:内田貴史)。新章突入で、ディレクターも今作初登板の内田氏。朝ドラでは『ちむどんどん』(22年度前期)に参加。助監督から後半、チーフディレクターと連名で演出をやって、スピンオフ『ちむどんどん外伝 歌子慕情編』の演出を担当した。ちなみに、『風、薫る』の制作統括・松園武大も『ちむ〜』の演出をやっている。
内田氏はほかに、ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』(25年)にも参加。『ちむどんどん』は主人公(黒島結菜)が食堂をやる物語で、『しあわせは〜』は体にいい薬膳が出てくる、すてきな団地暮らしを描いたやさしい物語。
どちらも食が題材だったからか、第76回は味噌汁の鍋とまな板の上のみずみずしい大根が映り、湯気はたち、あたたかい台所の空気が演出されていた。しかも猫まで鳴いている。
ド頭は、行李(こうり)の上にきちんと畳まれた真っ白な看護婦の制服が置かれていて、りん(見上愛)が看護婦の制服を脱いで新たな道を歩む暗示のようだ。第15週では、りんは制服を着たまま家に帰ってきたことと対照的で、生計のために看護婦に執着していたが、その感情が一段落したようにも見える。
冒頭数分だけで、こんなにも行間を想像できる画づくりってすばらしい。新章に向かっての気合を感じる。
りんはさいばしを落とし、直美(上坂樹里)が代わりの箸を渡す。穏やかなはじまりであったが、この回の白眉なのはこのあとだ。
実に生々しい、女子の口げんかが繰り広げられる。
「怒ってる?」
「怒ってないよ」
「いや、怒ってるでしょ」
「怒ってないって」
「怒ってるじゃない」
「怒ってはないけど、私の知らないところでいろいろと」
なんとなく彼氏彼女の痴話げんかのようにも思えるが……。







