「気分の落ち込みに、薬に頼るしかないのだろうか」――その問いへの答えは、世界の精神医療がいま向かっている方向にあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、「第3世代の認知行動療法」と呼ばれるマインドフルネス認知療法についても書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】薬なしでストレスがなくなる習慣とは?Photo: Adobe Stock

第3世代の認知行動療法

――マインドフルネスは、心理療法の分野でも注目されていると聞きました。

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):はい。アメリカで生まれた「認知行動療法」と、東洋に起源を持つ「マインドフルネス」が出合い、いまではマインドフルネス認知療法が「第3世代の認知行動療法」として広く認知されています。

――認知行動療法とはどのようなものでしょうか。

久賀谷:「人間は『考え・気持ち・行動』の3つから成り立っている」という思想に基づいており、不眠、うつ、不安、パニック障害、拒食症、薬物依存、怒りなどさまざまな領域で効果が実証されている療法です。

主に行動を修正する行動療法として始まったのですが(第1世代)、考え方の悪いクセ、いわゆる「認知の歪み」を一定の理論に基づいて修正していく療法となりました(第2世代)。これにマインドフルネスを組み合わせたのが、マインドフルネス認知行動療法です。

瞑想などを取り入れて自分の認知を客観視させ、考え方のクセに気づきやすくするのです。

薬より先にマインドフルネスを

久賀谷:いまは精神医療の現場で薬を使うことは減っています。

副作用や依存性の問題もありますし、患者さんたちがより自然なアプローチを望むようになっていますから。アメリカでは、カウンセリングや磁気医療、マインドフルネス認知療法などが主流です。イギリスでも、程度の軽いうつ病には、薬に先んじてまずマインドフルネスを考慮することが国レベルのスタンダードになっていますよ。

――たしかに、より自然なアプローチで良くなるならそちらのほうがいいですよね。

久賀谷:オックスフォード大学のチームが行った研究を紹介しましょう。

長年にわたって薬物治療を受けている重度のうつ病患者を2つのグループに分け、一方にはこれまで通り薬を投与し、もう一方は薬の処方をやめて、週2時間のマインドフルネス認知療法に切り替えました。

8週間の治療のあと約2年間にわたって追跡調査を行ったところ、なんと2つのグループの再発率にほとんど差はありませんでした。マインドフルネス認知療法によるカウンセリングが、薬と同等の効果を発揮したのです。うつ病再発予防において、マインドフルネス認知療法の有効性が示された画期的な研究と言えます。