「優秀なメンバーが揃っているのに、チームとしての成果が出ない」――その原因は、能力ではなく「エゴ」の衝突にあるのかもしれない。米国在住の精神科医・久賀谷亮氏の著書『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』には、エゴを抑えて最強のチームをつくる脳科学的アプローチも書かれている。その一部をご紹介しよう。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【精神科医が解説】ギスギスした職場を変える方法・ベスト1Photo: Adobe Stock

エゴの衝突で組織が機能不全に

 職場の雰囲気がギスギスしている。優秀なメンバーが揃っているはずなのに、なぜかチームとしての成果が出ない。
 そうした組織の機能不全は、個々の能力不足ではなく、「エゴ(自己へのとらわれ)」の衝突によって引き起こされていることが多い。「自分をよく見せたい」「他者より優位に立ちたい」というエゴが前面に出ている状態では、人は周囲の状況を客観的に見ることができず、チームとしての最適解を見失ってしまう。その解決策のひとつとなるのが、GoogleやAppleといった世界的企業が導入しているマインドフルネスだ。

チームワークを阻害する「自意識」

 ベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』の中に、マインドフルネスがチームワークにもたらす効果について言及しているページがある。本書の物語の登場人物、イェール大学の「ヨーダ」はこんなふうに語っている。

 チームや組織を動かしていくうえでは、自我が邪魔になることがある。日本語ではセルフレスネス(Selflessness)を意味する『滅私』という言葉があるそうじゃな。(中略)マインドフルネス瞑想は自己へのとらわれを司る後帯状皮質の活性を低下させるという話をしたのを覚えているかな? この点を発展的に解釈すれば、マインドフルネスはより高度なチームワークを生み出す可能性もあるぞ。後帯状皮質の活動を抑えれば、理論的には「自分が、自分が」というエゴも顔を出しづらくなるわけじゃからな。――『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』p.211

 多くの一流企業がマインドフルネスを導入しているのは、単に社員のストレスを軽減するためだけではない。脳のベースライン活動を行っている回路デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の主要部位であり、「自己へのとらわれ」を司る後帯状皮質の活動を低下させることで、エゴを抑え、フラットな視点を持てるようになるからだ。

「やさしさ」が組織の生産性を高める

 実際に、全社でマインドフルネスを導入したアメリカの大手医療保険会社エトナでは、社員のストレスが3分の1になり、仕事効率が向上したそうだ。すべてが直接的な原因ではないにしろ、導入後には従業員の医療費が大幅に減り、1人あたりの生産性が年間約3000ドルも高まったという。

 また、他者への慈しみや思いやりを育てる「メッタ(慈悲の瞑想)」を実践することで、脳内には愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌され、人間関係のストレスが激減する。「自分が」というエゴを捨て、他者への「やさしさ」を持つこと。これこそが、最先端の脳科学が導き出した、最強のチームを作るための合理的なアプローチなのである。