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なぜ一部の飲食店やタクシー配車アプリは、「あと何分」という調理・到着の待ち時間をリアルタイムで表示するのか?Photo: Adobe Stock

「待たされる」ことより、
「わからない」ことのほうがつらい

 タクシー配車アプリを開くと、車のアイコンが地図上を動き、「あと6分で到着します」とリアルタイムで表示される。あるいは一部の飲食店では、注文後にモニターやアプリで「調理まであと何分」というカウントダウンが流れる。

 実際の待ち時間そのものは、こうした表示があってもなくても変わらないはずです。それなのに、なぜお店やサービスは、わざわざこの「見える化」にコストをかけているのでしょうか。

 実は、この「あと何分」という表示は、単なる便利機能ではありません。

 人が「待つこと」そのものよりも「先が見えないこと」に強いストレスを感じてしまう心理を和らげるための、非常によく考えられた仕掛けなのです。

「わからない」という状態そのものが、不快感の正体
(統制感の欠如によるストレス)

 人は、自分の置かれた状況をある程度コントロールできているという感覚、いわゆる「統制感」を持てないとき、強い不安やストレスを感じることが知られています。

「あとどれくらい待てばいいのか分からない」という状態は、まさにこの統制感が失われた状態です。

 5分で終わるのか、30分かかるのか分からないままでは、その間に何をすればいいのかも決められず、ただ落ち着かない気持ちで待ち続けることになります。

「あと何分」という具体的な見通しが示されるだけで、たとえ実際の待ち時間が短縮されるわけではなくても、お客様は「この時間は他のことをして過ごそう」「もう少しだから待とう」と自分の行動を主体的に選べるようになり、同じ待ち時間でも感じるストレスは大きく軽減されます。

「進んでいる」ことが見えると、待つこと自体が我慢できる
(進捗の可視化による安心感)

 もう一つの理由は、カウントダウンや車が地図上を進む様子が、「状況が確実に進行している」ことを伝えている点です。

 何の表示もない状態では、お客様は「本当に注文は届いているのか」「配車はきちんと手配されているのか」という不安さえ抱きかねません。時間の経過とともに数字が減っていく、あるいはアイコンが近づいてくる様子を見ることで、「自分の依頼はきちんと処理され、確実に進んでいる」という安心感が得られます。

 このように、待ち時間の長さそのものよりも、「見通しが立っているかどうか」「進行が確認できるかどうか」のほうが、お客様の体感的な満足度を大きく左右しているのです。

他の業種でも使える
「見通しの可視化」設計

 先の見えない時間を「見える化」することで体感的な満足度を高めるこの手法は、他の業種にも応用できます。

 ・美容室やクリニックの受付:
「あと2組でご案内です」といった順番表示を待合室のモニターに出し、待ち時間そのものより「見通しの有無」による不安を軽減する

 ・引っ越し業者や宅配便の配送:
 到着予定時刻をアプリで随時更新し、「今どのあたりを走っているか」を地図上で確認できるようにする

 ・修理受付やクリーニング店:
「本日の混雑状況」と「お預かり品の進捗ステータス」を店頭やアプリで表示し、仕上がりまでの見通しを事前に伝える

まとめ

 飲食店やタクシー配車アプリが「あと何分」という待ち時間をリアルタイムで表示するのは、単に情報を親切に伝えるためだけではありません。

 ・「統制感の欠如」によるストレスを、見通しを示すことで軽減し
 ・「進捗の可視化」により、依頼がきちんと処理されているという安心感を与えている

 という、待ち時間そのものの長さではなく、「先が見えているかどうか」を通じてお客様の体感的な満足度を高める仕掛けなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。