ビジネスメールで当たり前に使われる「お世話になっております」や「弊社」といった表現。それは相手によって使い分けることが大切でもあります。この記事では、書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏に言葉遣いのポイントを書き下ろしてもらった。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

若手社員から「どうして一度も会ったことがない人に『お世話になっております』と言うのですか?」と聞かれたら、何と言い返す?Photo: Adobe Stock

「お世話になっております」って、誰に?

 メールライティング研修の場で、若手社員から、よくこんな質問をされます。

「どうして、一度も会ったことがない人にでも、『お世話になっております』と言うのですか?」

 たしかに、個人の感覚からすれば不思議に思うのも無理はありません。
 そんなとき、私はこう答えます。

「個人的には初対面でも、組織で働く以上、『自社の誰かが相手の会社の誰かにお世話になっている』という考えがあるからです」

「お世話になっております」は、「組織と組織のつながり」に対する敬意が込められた、日本ならではの謙虚な表現です。

 しかし、この言葉も「相手」によっては、急に機械的で冷たい壁を作ってしまうことがあります。
 それは、相手が法人ではなく「個人のお客様」の場合です。

 相手が会社(法人)であれば、カチッとした言葉の方が安心感を与えます。
 しかし、相手が個人のお客様のときに「お世話になっております」から始めると、どこか事務的な印象を与えてしまいがちです。

 個人のお客様へは、状況に合わせて、「(商品・サービス名)をご利用いただき、ありがとうございます」「ご連絡をいただき、ありがとうございます」といったお礼から始めるのがおすすめです。
 親しみやすく、相手に寄り添った印象を与えられます。

「弊社」って言う?

 実は、一人称にもまた、法人と個人との使い分けに工夫があります。

 相手が法人であれば「弊社」が一般的ですが、個人のお客様に対して「弊社」を使うと、硬く聞こえがちです。
 そもそも「弊社」という言葉自体がピンとこない方もいらっしゃいます。

 では、個人のお客様には、自社を何と呼びましょうか。
 私のおすすめは「私ども」です

「弊社」の対は「御社/貴社」、「私ども」の対は「あなた様」=個人のお客様になります。
 さらに「私ども」と和語を使うと、途端にビジネスライクな硬さも消えないでしょうか。

 相手の属性によって、言葉を変える。
 実は私の周りの「感じのいい人たち」が行っている、何げないけれど、印象がガラリと変わるひと手間です。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に5万部を突破した『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。