困難を避けるのではなく
成長のチャンスと捉える

 つまり、ストレスには良い面と悪い面の両面があり、幸福感と悩みとの双方を発生させる基になっているということです。これをマクゴニガルは「ストレスパラドックス」と呼んでいます。仕事にもやりがいや幸福感を感じられる面と、不満や落胆を感じる点と両面があります。

 そして、仕事上も良い面を見出そうと取り組むことで、メリットの方を多く享受しやすくなるように、ストレスに関しても、メリットの方を理解し、意識することで、望ましい影響をより多く得られる可能性が高まるのです。

 ストレスには良い面があると理解するだけでなく、積極的にストレスの良い面を見ようとすることが重要です。困難に直面した際に、「困った状況だ、何とか逃れたい」と思うのではなく、「学習と成長のチャンスだ」と捉えることで、ストレスからくる弊害を抑えられるばかりか、幸福感が増し、より健康に、そして有能になれるのです。ストレスを減らそうと必死になる必要はありません。ストレスの捉え方を変える必要があるのです。

修羅場を体験すれば
強い心も身に付いていく

 近年、「サクセッションプラン」と呼ばれている、次世代経営人材の選抜・育成の取り組みが盛んであり、どのような人材が相応しいのか、人材像を明確にするために、経営者にインタビューをすることが私は多くあります。「どのような経験が役に立ちましたか?」との問いに、ほとんどの経営者は口を揃えて、「修羅場体験」を挙げます。

 修羅場体験というのは、たとえば、つぶれかけの子会社の再生や、海外拠点での孤立無援での改革など、絶体絶命のような状況での試練を意味します。なぜ修羅場体験を挙げるかといえば、自分自身で、そうした経験が役に立ったとの実感があるからです。

 どのように役に立っているかと言えば、多少の困難に直面しても、「あの時と比べれば大したことはない」、「あんな状況の中でもなんとかできたわけだから、今回も必ずなんとかできる」と思えることが大きいようです。

 とてつもなく大きなストレスがかかった経験であることは間違いないと思われますが、そうした経験こそが自信になり、楽観性にもつながり、またレジリエンス(回復力)を身に付けるうえで必要不可欠なものとなっているのです。