「なぜかいつも味方される人」の決定的な特徴〈風、薫る第87回〉

最初の味方・吉江との別れ

「困りたるときはかならず仲間に相談し、あわよくば味方につけてしまうべし」。直美は、虎太郎(小林虎之介)も味方につける。薬の会社に勤めているから、これほど都合のいい人はいないだろう。

「りんがお世話になっている方ですから」と虎太郎は、りんに自分のことを伝えてほしいとお願いすると、直美は「虎太郎さんお元気そうだ」と伝えると約束する。

「お元気そうだ」だけ? 虎太郎に仕事の協力をしてもらったとくれぐれも言うとは言わない。

 まだ協力者はいる。シマケン(佐野晶哉)だ。彼は新聞社の印刷機を使って、ただで派出看護の宣伝チラシを印刷してくれた。

 ここでは直美は「このことをりんに伝えておく」と約束する。「シマケンさんお元気そうで」ではなく、シマケンが頼りになることを伝えるというのだ。虎太郎と差がある。以前から直美がりんとシマケンを応援しているのは視聴者もわかっている。とはいえ、なんだかなあ。栃木時代からの虎太郎のことを思うと、お気の毒である。

 場所もできた。機材や薬、働き手も確保した。資金は文の遺産。

 さっそくチラシを町で配りはじめる直美だが、相手にされない。いま病気で困ってなければ当然興味はないだろう。

 最後の味方――というか最初の味方である吉江(原田泰造)が訪ねてきた。

 吉江は、牧師らしく、文の位牌代わりのぶどう酒の瓶(髪飾りを巻き、花をいけている)に祈りを捧げる。直美は吉江に派出看護会の名前をつけてほしいと頼む。

 東京を離れ九州の伝道を担うことになり、その挨拶に来た吉江は、急いで名前を考えると引き受ける。

 幼い頃から唯一の理解者だった吉江が遠くに行ってしまう。だがいまや直美のまわりにはたくさんの協力的な人がいる。嘘をついて生き抜いてきた直美が、素直にホントの涙を流せるようになった。だから吉江は安心して去っていくのだろう。

 別れ際、吉江はぎゅっと目をつむる。そこからホントの涙が絞り出されただろうか。

 ドラマのなかで、ひとつもいやなところのなかった善人そのものだった吉江が去るのは惜しい。やっぱり彼は神様が天涯孤独な直美に遣わした天使のような存在だった気がする。

「なぜかいつも味方される人」の決定的な特徴〈風、薫る第87回〉