たとえば厚生労働省の調査では、1996年と2023年を比較した場合、前者は0.3764から0.5037へと大きく変化しているが、後者は0.3096から0.3163へとほとんど変化していない。このことは、日本では所得格差が拡大している一方で、その分、所得再分配の強化が進められてきたことを意味している。
そこで富の主な移転先となっているのは、とりわけ高齢化の進行に伴って急増してきた高齢者層だが、では主な移転元となっているのは、格差の拡大によって生み出されてきた層、すなわち富裕層かというと、実は必ずしもそうではない。
ここで富裕層をめぐる状況に目を向けてみよう。日本では1980年代半ば以降、富裕層に有利になるような税制改革が繰り返し行われてきた。ピーク時にはそれぞれ70%、75%だった所得税と相続税の最高税率は、現在では45%、55%となっており、とくに金融所得については分離課税の扱いで、約20%という低税率となっている。
そのため給与所得よりも金融所得の割合が高い富裕層では、所得が1億円を超えるあたりで所得税の負担率が低下するという、「1億円の壁」の問題が指摘されている。また、社会保険料についても上限が設定されているため、富裕層になればなるほど負担率は低下する。
このように今日では、富裕層からの所得移転の機能が大きく損なわれてしまっている。そうしたなかで再分配の強化が進められてきたため、一般の人々の負担が増すことになり、しかも主な移転先が高齢者層であることから、現役世代の不公平感が高まることになる。そこから生まれてきたのが世代間格差をめぐる議論であり、新旧対立という争点だったと言えるだろう。
こうしたことからすると、この問題の核心にあるのは、実は高齢者を優遇する政治ではなく、むしろ富裕層を優遇する政治だということになる。そしてそれを推し進めてきたのは、1980年代半ば以降、日本社会の中に徐々に姿を現してきたネオリベラリズムの政治だった。つまり世代間格差という問題の実質は、ネオリベラリズムによってもたらされた貧富の格差という問題だと見ることができる。







