通帳を確認する高齢男性写真はイメージです Photo:PIXTA

「高齢者ばかりが優遇されている」という現役世代の不満は、税や社会保険料の負担が重くなるなかで、広く共有されている。だが、日本の所得再分配や税制の変化をたどると、問題は単純な世代間格差では捉えきれない。高齢者への給付を支える一方で、富裕層からの所得移転の機能が弱まり、結果として現役世代の不公平感が高まっている構造が浮かび上がる。社会学者の伊藤昌亮氏は、こうした状況を生み出した背景をどう捉えているのか。※本稿は、社会学者の伊藤昌亮『曖昧な弱者の時代』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。

誰も助けてもらえない
社会のほうがまだ公平だ

 2024年の衆議院総選挙に先立って9月に行われた自民党総裁選挙では、ホリエモンなどの「ニューなわれわれ」(編集部注/税制や社会保障制度からもたらされる世代間格差や、高齢者への過度な配慮のために日本社会のイノベーションが遅々として進まないことに、危機感を示す現役世代のことを筆者はこのように表現している)のインフルエンサーは軒並み、解雇規制の緩和などを訴えていた小泉進次郎を支持し、一方で金融所得課税の強化などに触れていた石破茂に反発するような姿勢を見せていた。そこには彼らの立場が如実に示されていたと言えるだろう。

 そうした考え方を信奉しているのは、しかしホリエモンやひろゆきなどの著名人や成功者、つまり強者の位置にいる者だけではない。むしろ生活苦に苛まれている現役世代や、将来不安に怯えている若者世代など、弱者の位置にいる、もしくは自らを弱者だと捉えている多くの人たちもまた、そうした競争主義的で市場主義的な考え方を信奉している。

 そこには従来の見方からすると、2つの意味での顛倒があると言えるだろう。

 第一に従来は、高齢者こそが弱者であり、現役世代や若者世代は強者に当たるものと考えられていた。