ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワードPhoto:JIJI

連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「給付付き税額控除」です。通常の減税では恩恵が届きにくい低所得者にも、現金給付を通じて支援する仕組みです。2029年度の導入に向け、対象所得の把握や給付額、減額ラインの設計が焦点となります。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

減税だけでは届かない低所得者に
現金を給付する「給付付き税額控除」

 今回のキーワードは「給付付き税額控除」です。

 超党派の社会保障国民会議に設けられた実務者会議は7月16日、所得に連動して支援額を変える「きめ細かな給付」を2029年度に本格導入する方向で、中間取りまとめ案を示しました。ここで想定されているのが、給付付き税額控除を軸とした新たな支援制度です。

 給付付き税額控除は、実際には所得や家族構成などに応じて支援額を変えるため、制度が複雑になりがちです。まずは単純化して、基本的な仕組みを説明しましょう。

 通常の減税は、支払う税金の額を減らすものです。仮に、所得税を一律4万円減らすとします。

 所得税を20万円納めている人は、税負担が16万円になります。12万円納めている人は8万円になります。

 では、所得税を2万円しか納めていない人はどうなるでしょうか。税負担はゼロになりますが、軽減額は2万円にとどまります。所得が低く、もともと所得税を納めていない人は、差し引く税金がないため、減税の恩恵を受けられません。

 このように、通常の所得税減税だけでは、税負担の小さい低所得者ほど恩恵が小さくなります。

 そこで、税額控除の額が税負担を上回った場合に、その差額を現金で給付するのが給付付き税額控除です。

 4万円の税額控除を設けた場合、所得税を2万円納めている人は、税負担がゼロになった上で、残る2万円を現金で受け取ります。所得税を納めていない人にも、原則として4万円が給付されます。

 つまり、所得税の減税と現金給付を一体化し、税負担の小さい人や、所得税を納めていない人にも支援を届ける仕組みなのです。

 一方、政府・与党は、給付付き税額控除の本格導入までのつなぎとして、飲食料品にかかる消費税の負担を時限的に軽減する案も検討しています。政府は26年2月時点で、食料品の消費税率ゼロを、本格制度が始まるまでの2年間に限った措置と位置付けていました。

 ただし、実施時期や税率、財源を含む具体的な内容は、なお調整が続いています。実務者会議では、27年度から先行的な所得連動給付を始め、29年度に本格制度へ移行する案も示されました。

 消費税率を一律に引き下げれば、所得にかかわらず、対象商品を購入する全ての人の負担が減ります。しかし、支出額の大きい世帯ほど、金額ベースの減税効果も大きくなります。低所得者に支援を集中させる仕組みとしては、所得に応じて給付額を変えられる給付付き税額控除の方が効率的です。

 給付付き税額控除は、物価高に苦しむ中・低所得者だけでなく、税金や社会保険料の負担が重い現役世代、子育て世代を重点的に支援する制度として期待されています。

 もっとも、29年度の導入時には、税額控除と給付を組み合わせた本来の仕組みではなく、まずは現金給付を中心とした制度になる可能性があります。

 受け取る側から見れば、税負担を減らして差額を給付する場合も、同額を全て現金で給付する場合も、最終的な手取りの増加額は同じです。ただし、給付だけの制度を給付付き税額控除と呼べるのかという制度上の違いは残ります。

 期待が高まる給付付き税額控除ですが、日本で最初にその導入を明確に打ち出した主要政党はどこだったのでしょうか。次ページでは、その答えを確認するとともに、米国やカナダの制度、日本で導入される制度の見通しを解説します。