『エースをねらえ!』が打ち破った
恋愛スポ根少女マンガの常識
テニスは当時の皇太子殿下・美智子妃の「軽井沢の恋」の影響もあって、ハイソなスポーツとしてあこがれの対象となっていました。
このジャンルで70年代にもっとも有名な作品は山本鈴美香の『エースをねらえ!』(『週マ』第1部・73年2・3合併号~75年5号、第2部・78年4・5合併号~80年8号)でしょう。
この作品は部活というパーソナルな世界を基本にしながら、スポ根的な求道性と共に、大ロマン的な荘厳な恋愛を描いた作品でした。
名門の県立西高等学校テニス部に入部した平凡な少女・岡ひろみを主人公にしたこの作品は、スポ根といえば汗と血と涙が滲むものという従来の常識を打ち破る“華麗なるスポ根物”でした。そもそもテニスにはハイソなイメージがありましたが、岡ひろみがテニス部に入部したのは、その華麗さから“お蝶夫人”のニックネームで呼ばれるテニス部の先輩・竜崎麗香への憧れからでした。ハイソの象徴みたいな先輩です。
麗香も自分を慕うひろみを可愛がっていましたが、新任のコーチ宗方仁が、代表選手候補としてひろみを抜擢したことによりドラマが動き出します。
技術的にまったく未熟なひろみの抜擢を快く思わない部員たちは彼女を苛め、麗香はそれには加わらないものの、宗方コーチの真意が分からず、ひろみに冷たくなったりします。
しかし宗方コーチのしごきともいえるトレーニングに耐えながらひろみが頭角を現しはじめると、麗香は自分に追いつき脅かす存在になりつつあるひろみを畏怖しながらも正当に認め、ともにテニスの高みを目指す仲間として受け入れてサポート、自分のライバルで他校の選手・緑川蘭子に「もうわたくし達はひろみにはかなわない」と老練なシニアみたいな感慨を述べたりもします。
岡ひろみと宗方仁の強い師弟愛には恋愛を超える深みがありますが、当然ながら禁欲的なラブも含まれているでしょう。







