少女マンガにおける王子様願望を見ていると、少女/女性にとって、恋愛/結婚は、自分が生まれ変わるチャンスとして描かれていることに気づきます。

 男性の場合、恋愛を通して自分が成長するとしても、それは学業や仕事のモチベーションアップへとつながっており、結婚は「立派になった自分」「彼女にふさわしくなった自分」への御褒美として獲得されるものであることが多いのですが、女性にとって結婚は生活環境自体に激変をもたらし、相手のレベルですべてが変わってしまうのです。

 少年マンガやラノベでスイーツに相当するのは、恋愛物ではなく転生物なのかもしれません。

韓国・台湾でもドラマ化
東アジア儒教圏との親和性も

 ちなみに『花より男子』は紙媒体だけで累計5000万部を超え、少女マンガ最大のヒット作と言われていますが、日本だけでなく東アジア諸国で広く読まれ、日本はもちろん韓国や台湾でもそれぞれにドラマ化されるほどの人気となりました。

 心理学者の小倉千加子は、『花より男子』には女子のハイパーガミー願望を満足させる構造で、つまりは家父長制的価値観とも親和性が高いとみており、日台韓という東アジア儒教圏での相次ぐドラマ化は、それを象徴しているとみています(『結婚の条件』)が、まあ上昇婚願望はジェイン・オースティンの『高慢と偏見』(1813)の20世紀版の感があるヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』(1996)にも見られますし、日本ほどあからさまに本音を描かないだけで、欧米でもそれなりに残存しているし、より戦略的に考慮されている気はします。

 90年代から2010年代前半にかけて目立ったのは、強引なオレ様男子でした。壁ドンとか「結婚したのか、オレ以外の男と」などのセリフで知られるアレです。

『花より男子』の道明寺司もオレ様でしたが、オレ様な態度が許されるのはイケメンでスポーツ万能とか頭脳明晰とか実家が金持ちといった条件をクリアしている男性に限られるのはいうまでもありません。