薄型テレビの覇権争いが新次元に突入した。火ぶたを切ったのは韓サムスン電子だ。今年3月、液晶パネルのバックライトに、CCFL(冷陰極管と呼ばれる蛍光ランプ)の代わりにLEDを採用した「LEDテレビ」を投入した。LEDの採用で、奥行き約1インチという薄型化と、従来比最大40%の低消費電力化を実現した。
価格は、たとえば40インチでは従来比約3割高い1500ドル弱にもかかわらず、「液晶の次はLEDテレビの時代」という積極的なマーケティング戦略と、折からのエコブームも追い風となり、テレビ全体のシェア拡大に貢献している。米ディスプレイサーチの調査では、2009年第2四半期のサムスンの薄型テレビの出荷金額シェアは、前四半期比1.2ポイント増の23.7%となり、12.8%で2位のソニーを大きく引き離している。
先行逃げ切りを目論むサムスンを、競合他社も必死で追う。シャープは、7月に北米でサムスンより約2割安い機種を発売。「サムスンがLEDテレビを前倒しで、しかも普及価格帯に投入したことで、各社はいっせいに開発の前倒しに動いている」(林秀介・テクノ・システム・リサーチ・マーケティングディレクター)。米ヴィジオは年末に20インチ台の機種を、ソニーも年明け早々に普及価格帯の機種を投入する模様だ。
各社がLEDテレビの投入を急ぐのは、「LEDテレビは薄型テレビ市場のブルー・オーシャン(競争のない未開拓市場)」(鳥居寿一・ディスプレイサーチバイスプレジデント)だからだ。5年以内に液晶テレビの過半をLEDテレビが占めるという予測もある。
新たな市場を制するのは誰か。カギとなるのは、供給が限られているLED素子の確保だ。サムスンはLEDを内製する新会社を設立している。日本勢にも決断の時が迫っている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)