
りん、本領発揮
「お手洗いの穴」
村長は「何言うてんだ」と相手にしないが、死体を埋める穴ではなく、生きるための穴。同じ鍬でも、生と死、どちらも担っている。だが、りんたち医療従事者は「生きる」ことを選ぶ。その精神性が現れているいい場面だ。
だが、避病院に向かう途中、向こうからやって来た荷車には、死体が乗っている。亡くなってしまう人もいるのだ。
やっと到着すると、逃げようとする人もいて、見張っていると言う。中に入ると、うめき声がして、むしろの上にたくさんの人が寝転んでいる。
医者はたったひとりしかいなくて、すっかり疲れきっている。
ここで、りんが立ち上がる。
「まずは換気。そして掃除と消毒を徹底します」
黒川は「一緒にここを病院にしましょう」と励ます。あちこちの窓を開けると、風と光が入ってくる。締め切った部屋で汚物にまみれていたら、治るものも治らない。でもまだ民間に医療というものが行き渡っていない時代は、病気に罹った人たちを隔離するしか考えが及ばなかったのだろう。
バーンズ先生の最初の教え「清潔」――換気と掃除がここに来て、威力を発揮する。
東京の一級の病院・帝都医大で腕を振るってきた黒川と、日本初のトレインドナースのりんは冷静に的確に行動する。
りんは消毒に使う石炭酸水を作ることを、看病婦たちに教える。「まずは5パーセント。煮沸した水9割5分に対して石炭酸を5分混ぜます」。この時代、パーセントはわかるのだろうか。大さじ何杯とかのほうがわかりそう。
この石炭酸水は原案の『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著)にも出てくる。越後高田「知命堂病院」の章で、りんの参考になっているとされる大関和が記した「看護婦派出心得」の重症患者の排泄介助の項目に登場するとある。
大関和は、伝染病対策に熱心に取り組み、排泄介助や排泄物の点検を厭わずやっていたと原案に書かれている。感染症が広がる現場では、こうした地道な仕事が、そのまま命を左右していた。汚物の処理はどうしても躊躇があるが、誰かがやらねばならない大事な仕事なのだ。
こればっかりは朝から汚物のドラマは……とは思えない。さすがに汚物の描写はなく、清潔の大切さと徹底する心意気が伝わってきた。







