日立製作所の笠戸事業所(山口県下松市)で製造されたJR九州の885系特急電車。独自開発したアルミダブルスキン構造の次世代鉄道車両システム「A-train」が採用されている Photo:PIXTA
日立製作所が米Anthropicとの戦略的提携を発表しました。このニュースを見て、「日立ほどの企業でも基盤AIでは米国の軍門に降ったのか」「日本のIT・AIはやはり負けた」と受け止めた人も少なくないかもしれません。しかし、私はまったく逆だと捉えています。日立ができていて、米国や中国のビッグテック企業ができていない部分を比較してみましょう。(トライズ 三木雄信)
すでにAIはコモディティ化へ
勝ち負けを決めるものは何か
私は先日まで、UCLAとシンガポール国立大学のエグゼクティブMBAに参加していました。そこで得た大きな収穫のひとつが、米国のAIや半導体企業で働くクラスメイトと、ひたすらAIについて議論できたことでした。
日本では「AIすごい」と、生成AIそのものの性能や技術進化に目を奪われ、大騒ぎしている論調が目立ちます。しかし、テクノロジーの最前線にいる彼らの認識は、すでに全く別のフェーズに進んでいました。
「AI、とりわけLLM(大規模言語モデル)そのものは、急速に付加価値の低いコモディティになる」
彼らがそう断言する背景には、AIの急速な低価格化とオープンウェイト化があります。
現在、AnthropicやOpenAIといった米国企業が、開発に巨費を投じてLLMの性能を競い合っています。しかし、その背後から中国勢が凄まじい勢いで追い上げています。象徴的な実例が、中国のスタートアップ「DeepSeek」や、アリババが主導する「Qwen(通義千問)」の台頭です。
DeepSeekは、米国の最先端モデルに匹敵する、あるいは特定領域で凌駕する推論能力やコーディング性能を持つモデルを、低い開発コストで構築し、世界に無償・低価格で公開しました。Qwenもオープンソースコミュニティで急速にシェアを拡大しています。
これら中国発の高性能モデルが無料で手に入り、あるいは桁違いに安価なAPIとして提供されるようになれば、モデルそのものの希少価値は一気に失われます。LLMは「誰でも安く調達できるインフラ」へと変貌しつつあるのです。したがって、これからの競争において「最高性能のLLMを自社で開発・保有しているかどうか」だけで勝負を決めることはできなくなるでしょう。
では、AIそのものがコモディティ化した世界で、一体何が勝ち残るのでしょうか。ここで思い出されるのが、かつてのスマートフォンへの転換期です。







