「『俺の若い頃は』なんて話は聞きたくない」――そう感じる若手社員は少なくない。実際、自慢話や武勇伝ばかり語る上司に、うんざりした経験がある人も多いだろう。しかし、本当に仕事ができる上司は、「俺の若い頃は」という言葉をまったく違う目的で使っている。それは部下を自慢で圧倒するためではなく、失敗から学んだ経験を伝えるためだ。では、部下の成長につながる「若い頃の話」とは、どのようなものなのだろうか。話題の書『3000件の職場の悩みを解決したプロが教える リーダーのふるまい大全』の著者・本田淳也氏が解説する。

仕事ができる人が、「俺の若い頃は」とあえて言う理由・ベスト1Photo: Adobe Stock

今や「禁句」になった言葉

「俺の若い頃はな――」
この言葉、今では部下が内心うんざりする「地雷ワード」の一つとされています。
自慢話が始まるサイン、武勇伝が延々と続く予兆――そんなイメージがついてしまっているからです。
でも、仕事ができる上司は、目的が違います。

失敗談として語る

仕事ができる上司が「俺の若い頃は」と切り出すとき、その後に続くのは自慢話ではありません。失敗談です。

私が結婚式場の営業をしていた頃の話です。
新郎新婦が外国人牧師を希望していたのに、発注ミスで日本人牧師が挙式1時間前に現れました。
新婦は「外国人牧師でないと挙式しない」と言い始め、現場は大混乱。

さらに別の式では、カメラ屋さんに披露宴のスナップ撮影を発注したにもかかわらず、披露宴が終わった後にフィルムが入っていなかったことが発覚しました。

どちらも、今思い返しても冷や汗が出るような失敗です。
でも、そこからどうやって対処したか、どう謝罪したか、どうリカバリーしたか
――その経験は、マニュアルには載っていない生きた知識です。

経験は、最高の教科書

クレーム対応や予期しないトラブルへの対処は、教科書で学べるものではありません。
実際の場面でどう動いたか、どんな言葉を選んだか、その経験の積み重ねが力になります。
でも、若手がそうした経験を積むには時間がかかります。

だからこそ、上司の失敗談が役に立つんです。
自分が経験していないトラブルでも、「そういえばあの話があった」と思い出せる。いざというときの引き出しが増えます。

話したくない失敗もあるかもしれません。
でも、自分の失敗を正直に語れる上司は、部下から信頼されます。
「この人も失敗してきたんだ」という安心感が生まれ、部下自身も失敗を恐れずに動けるようになるんです。

「俺の若い頃は」は、自慢のための言葉ではありません。
部下に経験を伝え、育てるための言葉です。